

行政法というのは、学者が整理した行政にかんするいろいろな法律を、体系的に学ぶことなんです。
いわば役所のルールを学ぶわけですから、なんだか取っつきにくいですよね。
行政法を攻略するカギは、まさに「具体的なイメージ」と「体系的に学ぶこと」にあります。
この記事では、
- 行政法の出題分野と形式
- 行政法の頻出分野と難易度
- 行政法の効果的な勉強方法
- 行政法のおすすめ参考書
- 行政法の試験種類ごとの勉強ポイント
をすべて解説します。
行政法を得意科目にして、本番で高得点をめざしましょう!
目次
公務員試験「行政法」を知ろう!
まずは、行政法がどんな科目なのか見てみましょう。
それから難易度や頻出分野を確認し、大まかな勉強の方針を立てます。
どんな科目なの?
行政法のおもな分野、出題数、出題形式は次のとおりです。
「ふ~ん。そうなんだ」くらいに読み流して大丈夫ですよ。
分野は6つ
行政法は大きく6つの分野があります。
- 【行政と法律】:行政法の基礎、法律関係、行政立法、行政計画
- 【行政作用法1】:行政行為の種類、効力、瑕疵、発生と消滅、附款、裁量
- 【行政作用法2】:行政法上の強制手段、行政手続法、行政指導、行政契約、行政情報の収集と管理
- 【行政争訟法】:行政事件訴訟、行政不服申立て
- 【国家補償法】:国家賠償、損失補償
- 【行政組織法】:国の行政組織、地方公共団体の行政組織、公務員法/公物法
出題数はとても多い
専門試験で行政法の問題はどれくらい出題されるのかというと、
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
行政法の出題数 | 12 | 5 | ― | 5 | 5 | 5 |
全体の回答数 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 |
全体の出題数 | 49 | 80 | ― | 55 | 40 | 40 |
回答必須/選択 | 必須 | 選択 | ― | 選択 | 必須 | 必須 |
受験案内 | 国総合 | 国一般 | 労基官 国税官 財務官 |
特別区 | ― | ― |
- 【国総合】:国家総合職(法律区分)
- 【国一般】:国家一般職
- 【国専門】:国家専門職(労働基準監督官、国税専門官、財務専門官)
- 【特別区】:東京都特別区(東京都23区)
- 【地上級】:地方上級(道府県庁、政令指定都市)
- 【市役所】:市役所上/中級(政令指定都市をのぞく市役所)
ほとんどの試験種でもっとも多い出題数です。
行政法は専門科目全体にしめる割合が大きいですから、行政法をさけては公務員試験の合格はないというぐらい重要な科目ですね。
受験案内にはそのほかの科目の出題数も掲載されていますから、ぜひ参照してみましょう。
※【国家専門職】は各試験種によって行政法の出題数や必須/選択が分かれるため、ここでは割愛しています。
出題形式は2つ
問題の出題形式は大きく2通りです。
- 【五肢択一】:「次の記述のうち、妥当なのはどれか?」
- 【妥当な組み合わせ】:「次の記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか?」
【国家総合職】【国家一般職】【国家専門職】では、単純な択一問題ではなく、妥当なものをすべて答える【妥当な組み合わせ】の出題形式が定着しています。
単純な択一問題よりも正確な知識が必要でレベルが高くなるため、集中して勉強に取り組みましょう。
行政法の問題は、重要な条文や判例から繰り返し出題されている傾向がつよくあります。
本番でとつぜん出題形式が変化しても、問われていることは変わりませんので、落ち着いて回答すれば大丈夫ですよ。
それでは次に、行政法の頻出分野と難易度を確認してみましょう。
頻出分野と難易度をチェック
公務員試験の試験種別に、行政法の頻出分野と難易度を表にまとめました!
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
行政と法律 | ◎ | △ | △ | ◎ | △ | △ |
行政作用法1 | 〇 | △ | ◎ | ◎ | △ | △ |
行政作用法2 | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
行政争訟法 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
国家補償法 | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
行政組織法 | 〇 | △ | ※ | ― | ◎ | 〇 |
難易度 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ |
- 【頻出分野】は「◎:とてもよく出る」「〇:よく出る」「△:出る」の3つに分類しています。
- 【難易度】は「★:とても易しい」「★★:やや易しい」「★★★:標準」「★★★★:やや難しい」「★★★★★:とても難しい」の5段階で表示しています。
- 個人の所感により作成したものです。
頻出分野は?
【国家総合職】は出題数が12問ととてつもなく多いですがら、すべての分野が頻出といって間違いありません。
そのほかの試験種には特徴があります。
国家一般職は【行政と法律】【行政作用法1】【行政組織法】からの出題は多くありません。
とくに【行政組織法】の「地方公共団体の行政組織」「公務員法/公物法」からは長いあいだ問題が出されていないようです。
国家専門職の【行政組織法】に注目してください。
国家専門職のうち、国税専門官の試験ではこの分野からの出題はまったくといっていいほどありません。
ですが、財務専門官の試験ではたびたび出題されているので、注意が必要です。
東京都特別区では、国税専門官と同様に【行政組織法】からの出題はめったにないです。
地方上級と市役所上/中級では、【行政と法律】【行政作用法1】からの出題は少なめ。
【行政組織法】のなかでも、「国の行政組織」にかんする問題はほとんど出題されません。
行政法は民法や憲法にくらべて、試験種ごとに頻出分野にちがいがあります。
本番直前期は、頻出分野の問題を集中的に復習しましょう。
難易度は?
難易度をみると、おおむね標準から少し難しいていどですね。
よく「行政法と民法どちらが難しいの?」と質問があります。
かんたんには比較できませんが、行政法は暗記をがんばれば得点につながりやすい科目です。
理解が求められる民法にくらべて、「行政法のほうが分かりやすい」と感じる受験生が多いのではないでしょうか。
頻出分野と難易度の話をまとめると、
- 試験種ごとに頻出分野に特徴がある!
- 難易度は民法ほど高くない!
勉強の方針
ここまでをふまえて、行政法の大まかな勉強方針を次のように決めましょう。
- 頻出分野を集中してつぶす!
- 公務員試験の勉強で憲法の次に対策する!
頻出分野を集中してつぶす
「試験種によって、頻出頻度に特徴がある」ことを伝えましたね。
頻出分野は力をいれて勉強し、ほとんど出題がない分野はほどほどにして、勉強のメリハリをつけましょう。
ですが、はじめは出題頻度にかかわらず、参考書のとおりの順番ですべての分野をひととおり勉強するのがおすすめ。
行政法は学者が整理した体系的な学問です。
さらに参考書では公務員試験の対策に特化して構成が考えられていますので、したがったほうが理解は早まるんです。
過去問題集を解きなおす頻度やレジュメを読み返す頻度を変えることで、力のいれぐあいに差をつけましょう。
公務員試験の勉強で憲法の次に対策する
地方上級や市役所上/中級を受験するときの、おすすめ勉強順番はこちらです。
公務員試験の勉強で最初にはじめるのは憲法がおすすめです。
憲法が終わったら、行政法もしくは民法に取りかかりましょう。
民法はもっとも分量が多いので、できるだけ早いうちに勉強しておきたい科目ですが、行政法の学習をとおしてさらに法律の素養を身につけてからのほうが、理解は早まるかもしれません。
民法と行政法のどちらを先に選ぶかは、好みでかまいません。
ただし、一度どちらかに手をつけたらやり切るまで、もう一方の科目を選びなおすことはさけましょう。
途中でやめた科目に苦手意識を感じてしまうようになるからです。
- 憲法
- 民法 or 行政法

行政法の特徴がよくわかりましたね。
それではいよいよ、公務員試験の行政法で高得点をとる勉強法を解説していきますよ。
公務員試験「行政法」が得点できる勉強法!
行政法を勉強するとき、本番直前まで心にとどめてほしいことがあります。
それをつねに意識しながら、導入テキストと過去問題集の使い方をマスターして学習していきましょう。
大切な3つのポイント
- 体系を理解する!
- 具体的なイメージを描く!
- 行政法ノートをつくる!
POINT.1 体系を理解する
「行政法は行政にかんする約2,000もの法律を集め整理した体系的な学問」とお伝えしましたね。
その内容は大まかに、
- 【行政組織法】:行政組織を規律する法を集めた分野。代表的な法律は「国家行政組織法」「地方自治法」
- 【行政作用法】:行政機関が国民に対して行う作用について規律する法を集めた分野。代表的な法律は「行政代執行法」「土地収用法」
- 【行政救済法】:行政活動に不満をもつ国民を救済するための法を集めた分野。代表的な法律は「行政事件訴訟法」「行政不服審査法」
まず行政組織を規律し、次に行政活動を規律し、最後に行政活動からの救済を規律しているという流れですね。
これを見ただけでも、「行政法は体系的な学問だな」と感じられませんか?
体系的な学問は体系を理解しながら勉強するのがコツです。
行政法はたくさんの知識や分類が登場してきます。
断片的に覚えるのではなく、体系がどうなっているのかを考えながら覚えるようにしましょう。
たとえば行政行為の分類などには樹系図、訴訟の流れなどにはフローチャートが役立ちます。
樹系図は枝分かれする基準がなにかをよく理解することで、分類がたくさんあっても記憶しやすくなるんです。
フローチャートは類似するものとの違いを意識して覚えることが大切。
POINT.2 具体的なイメージを描く
行政法は役所のルールを学ぶ科目なので、憲法や民法にくらべて具体的なイメージがわかないですよね。
新しく知ったことはできるだけ具体例と一緒に覚えるように心がけましょう。
それだけで行政法の得点力はどんどん高まっていきますよ。
たとえば命令的行為の分類は、
定義 | 具体例 | |
---|---|---|
下命 | 国民に一定の作為義務を負わせる行為 | 課税処分 |
禁止 | 国民に一定の不作為義務を負わせる行為 | 営業停止 |
許可 | 不作為義務を解除する行為 | 営業許可 |
免除 | 作為義務を解除する行為 | 予防接種免除 |
定義だけを覚えようとするより、具体例をいっしょに覚えたほうがあたまに定着しやすくなります。
POINT.3 行政法ノートをつくる
「行政法はたくさんの知識や分類が登場する」とお伝えしましたね。
新しい論点を学ぶたびに情報を整理して、【行政法ノート】をつくりましょう。
たとえばこんな感じでまとめます。
【国家賠償の法律用件】
- 公権力の行使であること(非権力的な活動も対象になる)
- 公務員の行為であること(一時的に公権力の行使を委ねられた民間人を含む)
- 職務上の行為であること(外形主義)
- 故意または過失による行為であること(通常の公務員に期待される注意義務)
- 違法な行為であること(不作為義務違反も対象になりうる)
- 損害が発生すること
行政法ではある法律の充足用件や判例などをたくさん覚える必要があります。
情報を1つずつ暗記するのではなく、表や樹系図のかたちに整理すると、知識が定着しやすくなりますよ。
内容が充実した行政法ノートは、読み返すだけで過去問題集を解くのと同じくらいの効果が期待できるんです。
おすすめ参考書と使いかた
参考書選びはとても重要。
数ある参考書のなかで、おすすめはこちらです。
- 【新谷一郎の行政法まるごと講義生中継】:導入テキスト
- 【公務員試験 過去問 新クイックマスター 行政法】:過去問題集
- 【公務員試験 合格の500】:総仕上げ
参考書の特徴やおすすめする理由をくわしく知りたいときは、この記事を読んでくださいね。
よい参考書をえらんだら、参考書を正しく使って勉強することが大切。
大まかな流れは次のとおりです。
- まる生を一気に読む!
- クイマスをくり返し解く!
- 合格の500を解く!
勉強の効果をもっとも高める参考書の使い方を、くわしく知りたいときはこの記事を読んでくださいね。
試験種類ごとの学習ポイント
公務員試験には国家総合職や国税専門官、地方上級などたくさんの種類があります。
試験の種類ごとに、行政法の効果的な学習方法はちがうんです。
自分が志望するところの学習ポイントをおさえましょう。
国家公務員や裁判所職員、東京都庁職員、国立大学法人等職員はとくに難関の公務員試験です。
「行政法の独学はちょっと自信がない…」というひとは、公務員試験予備校の活用をかんがえてみましょう。
公務員試験予備校は、質の高い講師やテキストがそろっているのでおすすめです。

これで行政法の勉強法の解説は終わりです。
おつかれ様でした。
行政法は法律要件や分類などが次からつぎへと出てきて、「こんなの覚えられない」と思うかもしれません。
ですが、もともと体系的な学問なので、過去問演習をとおして問題に慣れててしまえば、時間がたっても知識を忘れにくにいお得な科目です。
早めに攻略して、次の民法や経済学の勉強によゆうを持たせられるよう、がんばりましょう!
行政法って具体的なイメージがわかなくって、勉強しづらい科目でした。