

刑法はとても難解な学問です。
ほとんどの公務員試験で出題が少ないですし、選択せずに乗りきることもできる科目なので、刑法をすてる受験生は多くいます。
この記事では、
- 刑法の出題分野と形式
- 刑法の頻出分野と難易度
- 刑法の効果的な勉強方法
- 刑法のおすすめ参考書
- 刑法の試験種類ごとの勉強ポイント
をすべて解説します。
刑法を勉強するかどうか、するばあいはどうやって効率よく勉強するかを説明しますね!
目次
公務員試験「刑法」を知ろう!
まずは、刑法がどんな科目なのか見てみましょう。
それから難易度や頻出分野を確認し、大まかな勉強の方針を立てます。
どんな科目なの?
刑法のおもな分野、出題数、出題形式は次のとおりです。
「ふ~ん。そうなんだ」くらいに読み流して大丈夫ですよ。
分野は2つ
刑法は次の2つの分野に分かれています。
- 【総論】:基礎理論、構成要件、違法、責任、未遂犯、共犯、罪数
- 【各論】:個人的法益、社会的法益、国家的法益
総論ではおもに、犯罪はどうしたら成立するのかを学びます。
各論はどんな種類の犯罪があるのかを1つずつみていきます。
出題数は少ない
専門試験で刑法はどれくらい出題されるのかというと、
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
刑法の出題数 | 3 | ― | 3 | ― | 2 | 2 |
全体の回答数 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 |
全体の出題数 | 49 | 80 | 48 | 55 | 40 | 40 |
回答必須/選択 | 選択 | ― | 選択 | ― | 必須 | 必須 |
受験案内 | 国総合 | 国一般 | 労基官 国税官 財務官 |
特別区 | ― | ― |
- 【国総合】:国家総合職(法律区分)
- 【国一般】:国家一般職※出題なし
- 【国専門】:国家専門職(労働基準監督官、国税専門官、財務専門官)※国税専門官、財務専門官は出題なし
- 【特別区】:東京都特別区(東京都23区)※出題なし
- 【地上級】:地方上級(道府県庁、政令指定都市)
- 【市役所】:市役所上/中級(政令指定都市をのぞく市役所)
国家総合職や国家専門職で刑法は選択科目です。
ほかの科目を選べば刑法を勉強する必要はありません。
地方上級や市役所上/中級は必須回答ですが、出題数は2問と少ないですね。
出題形式は2つ
問題の出題形式は大きく2通りです。
- 【知識問題】:「次の記述のうち、妥当なのはどれか?」
- 【論理問題】:「~について次のような説がある。それぞれの説に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか?」
国家総合職は学説の対立を問う論理問題がよく出題されます。
国家専門職では論理問題の出題はほとんどありません。
地方上級や市役所上/中級は、知識問題をベースにときおり論理問題が登場します。
頻出分野と難易度をチェック
公務員試験の試験種別に、刑法の頻出分野と難易度を表にまとめました!
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
個別的労働関係法 | ◎ | ― | 〇 | ― | 〇 | 〇 |
集団的労使関係法 | 〇 | ― | 〇 | ― | 〇 | 〇 |
難易度 | ★★★★★ | ― | ★★★★☆ | ― | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
- 【頻出分野】は「◎:とてもよく出る」「〇:よく出る」「△:出る」の3つに分類しています。
- 【難易度】は「★:とても易しい」「★★:やや易しい」「★★★:標準」「★★★★:やや難しい」「★★★★★:とても難しい」の5段階で表示しています。
- 個人の所感により作成したものです。
頻出分野は?
刑法はすべての試験種で2問か3問の出題です。
分野は総論と各論の2つですから、頻出分野というものはなく、どちらからもバランスよく出題されます。
3問が出題される国家総合職や国家専門職では、わずかに総論のほうに重点がおかれているていどです。
また総論と各論の分野はいくつかのテーマに分かれていますが、そのテーマにも出題のかたよりはあまりありません。
難易度は?
国家総合職や国家専門職の難易度は高いです。
問題の選択肢が長文で、細かな知識を問われることがあります。
地方上級や市役所上/中級は標準的な難易度で、過去に問われた知識がくりかえし出題されています。
頻出分野と難易度の話をまとめると、
- すべての分野からバランスよく出題される!
- 難易度は高め!
勉強の方針
ここまでをふまえて、刑法の大まかな勉強方針を次のように決めましょう。
- 勉強するかどうかを考える!
- 専門試験科目のなかで最後に対策する!
勉強するかどうかを考える
まずは刑法を学習するのかどうか、慎重に決めましょう。
刑法は難解な学問なので、憲法などと同じくらい勉強の分量があります。
そのわりに出題数は少ないので、勉強のコストは重くなるわけです。
国家公務員試験のばあい、刑法は選択科目です。
刑法をすててほかの主要科目で乗りきるのか、苦手な科目があってどうしても刑法を選択しなければならないのか、考えましょう。
地方公務員試験のばあいは必須回答なので、刑法をさけることはできません。
でも、公務員試験は満点をとらなくても合格できる試験です。
専門試験科目のうち、ほかに苦手な科目がなければ刑法をすててもほかの科目で十分にカバーできるはず。
もし主要科目をどれだけ勉強しても得点が伸びなかったり、勉強期間によゆうがあったりするばあいは、刑法に取り組んで得点アップを目指してもいいでしょう。
専門試験科目のなかで最後に対策する
地方上級や市役所上/中級を受験するときの、おすすめ勉強順番はこちらです。
- 憲法
- 民法 or 行政法
- ミクロ経済学
- マクロ経済学
- 財政学
- 行政学 or 政治学
- 国際関係
- 刑法
多くのばあい、刑法は勉強しなくても合格をねらうことができます。
それでも刑法を勉強するときは、専門試験科目のなかで最後にとりくみましょう。
まずは主要科目や単純な暗記科目をかんぺきにすることが大切ですよ。

刑法の特徴がよくわかりましたね。
それではいよいよ、公務員試験の刑法で高得点をとる勉強法を解説していきますよ。
公務員試験「刑法」が得点できる勉強法!
理論的に難解な刑法を勉強するとき、本番直前まで心にとどめてほしいことがあります。
それをつねに意識しながら、導入テキストと過去問題集の使い方をマスターして学習していきましょう。
大切な3つのポイント
- 総論は構成要件→違法性→責任のプロセスを理解する!
- 各論は犯罪の保護法益を理解する!
- 中途半端に勉強しない!
POINT.1 総論は構成要件→違法性→責任のプロセスを理解する
総論を学ぶときは、犯罪が成立するかどうかを検討する次のプロセスを理解しておきましょう。
- 【構成要件に該当】:構成要件(ひとにケガをさせた、ものを盗んだなどをグループ化したもの)に該当するかどうかを形式的に判断する。該当すれば次にすすむ
- 【違法性阻却事由】:違法性阻却事由(正当防衛、治療行為など)にあたるかどうかを判断する。あたらなければ次にすすむ
- 【有責性】:有責性(責任無能力者ではないことなど)があるかどうかを判断する。あれば犯罪が成立する
ふつうは構成要件に該当すれば犯罪になります。
ひとにケガを負わせれば傷害罪ですよね。
でも、なかには犯罪にならないばあいがあるんです。
それが違法性阻却事由があったり、有責性がなかったりするとき。
刑法は3つのプロセスをたどって、犯罪かどうかを慎重に検討していきます。
刑罰として死刑を課すこともできますから、ぜったいに判断をミスしてはいけないんです。
刑法の総論とは、この犯罪成立要件のプロセスを細かく学ぶ分野といえます。
理論は難しいですが、このプロセスをあたまに入れながら勉強すれば、理解が早まりますよ。
POINT.2 各論は犯罪の保護法益を理解する
刑法の各論は、いろいろな犯罪についてどんなときに成立するのかを具体的に学ぶ分野です。
傷害罪や放火罪はどう成立するのかですね。
総論にくらべて細かな知識をたくさん覚える必要があります。
各論を勉強するときは、それぞれの犯罪の保護法益(何に対する罪なのか)を理解することが大切です。
保護法益を知っていれば、それを土台にしてほかの細かな知識や考え方を覚えることができます。
犯罪の数はたくさんありますが、公務員試験で問われる犯罪は決まっているので、参考書に登場する犯罪について保護法益をしっかりおさえるようにしましょう。
POINT.3 中途半端に勉強しない
刑法の勉強をはじめてみて、「やっぱり難しいな」と感じるかもしれません。
そのときは、きっぱりとあきらめることをおすすめします。
刑法の総論は「犯罪成立要件のプロセスを学ぶ分野」とお伝えしました。
一連の流れが理解できてようやく、刑法で得点できるようになります。
「分かりやすいところだけ勉強しよう」と思っても、全体が理解できなければ試験で正解する確立はとても低くなってしまいます。
刑法の各論は総論にくらべて各テーマが独立しているので、一部のテーマだけ勉強することはできます。
でも、頻出分野がしぼれないので、広く対策しておかないとやはり得点することは難しくなってしまいます。
刑法は憲法など出題数が多い主要法律科目と同じくらい、学習に時間がかかる科目です。
刑法をじっさいに勉強してみての難しさと勉強期間のよゆうを考えながら、刑法に集中して勉強にとりくむか、きっぱりあきらめるかを考えましょう。
おすすめ参考書と使いかた
参考書選びはとても重要。
数ある参考書のなかで、おすすめはこちらです。
- 【郷原豊茂の刑法まるごと講義生中継】:導入テキスト
- 【公務員試験 新スーパー過去問ゼミ 刑法】:過去問題集
- 【公務員試験 合格の500】:総仕上げ
参考書の特徴やおすすめする理由をくわしく知りたいときは、この記事を読んでくださいね。
よい参考書をえらんだら、参考書を正しく使って勉強することが大切。
大まかな流れは次のとおりです。
- スー過去をくり返し解く!
- 合格の500を解く!
勉強の効果をもっとも高める参考書の使い方を、くわしく知りたいときはこの記事を読んでくださいね。
刑法の総論と各論はどちらも分量がたくさんあります。
両方を一気に対策しようとすると、どちらも理解不足になってしまいがちです。
まずは、総論の分野から勉強をはじめましょう。
総論が終わったら、次に各論の勉強にうつります。
「犯罪の保護法益(何に対する罪なのか)を理解すること」が大切ですよ。
試験種類ごとの学習ポイント
公務員試験には国家総合職や国税専門官、地方上級などたくさんの種類があります。
試験の種類ごとに、刑法の効果的な学習方法はちがうんです。
自分が志望するところの学習ポイントをおさえましょう。
国家公務員や裁判所職員、東京都庁職員、国立大学法人等職員はとくに難関の公務員試験です。
「刑法の独学はちょっと自信がない…」というひとは、公務員試験予備校の活用をかんがえてみましょう。
公務員試験予備校は、質の高い講師やテキストがそろっているのでおすすめです。

これで刑法の勉強法の解説は終わりです。おつかれ様でした。
刑法はとてもマイナーな科目です。
勉強もらくじゃないので、むりに選択する必要はありません。
公務員試験はいかに効率よくたくさんの科目を勉強できるかが重要です。
もし刑法を勉強するばあいは過去問演習を中心にして、あまり負担を大きくしないよう注意しましょう。
用語が難しそうで出題数も少ないので、刑法の勉強はしませんでした。