

最難関の公務員試験が国家総合職です。
試験種目がたくさんあり、出題される問題もハイレベルなものばかり。
「国家総合職ってどんな試験?」「どうやって勉強したらいいの?」と疑問に思いますよね。
国家総合職の試験内容や難易度、試験科目や学習のポイントをすべて解説します。
国家総合職の「仕事内容」
日本では内閣のもとに「内閣府」「外務省」「厚生労働省」など、1府12省庁がおかれていますよね。
また、内閣から独立して人事院と会計検査院があります。
このような機関で国家総合職に採用された職員は働きます。
国家総合職の仕事は、次のとおり多様です。
- 政策の企画や立案
- 法律の制定や改正
- 法律の適正な運用
- 予算編成
- 国会対応
- 他府省庁との連絡調整
- 審議会の運営
国民全体の奉仕者として国家の仕組みづくりに貢献できることが、仕事のやりがいです。
国家総合職の「異動/昇任/年収」
国家総合職で採用された職員は、将来の幹部候補として期待されています。
若いうちからさまざまな部署を経験してキャリアを積んでもらう必要があるため、異動のサイクルはとても短いのが特徴。
海外への派遣、他省庁や地方自治体への出向もめずらしくありません。
異動をくり返しながら、役職もどんどんと上がっていきます。
20代後半は係長、30代前半からは補佐クラスが一般的です。
40歳くらいで準課長となり、課長に昇任するのは40代前半~後半。
50代以降から審議官、局長、次官と幹部職へ昇任していきます。
準課長クラスまでは同じ採用年度の職員はみんな横並びでポストが上がっていくのですが、課長級以上はバラツキが出はじめます。
昇任するにしたがって、もちろん給与も増えます。
年齢ごとの平均的な年収は、大手企業の社員にはおよばないようです。
公開されている採用初年度の給与例はこちら。
(東京都特別区内に勤務する行政職員の平成29年4月1日の給与例)
院卒者試験 | 大卒程度試験 |
---|---|
251,280円 | 219,240円 |
国家総合職の「学歴/高卒」
公務員試験は公正で公平な競争試験です。
受験資格を満たしていればだれでも受験することができます。
とはいっても、「学歴や出身大学で合否が決まるんじゃないの?」と疑問に思いますよね。
東大を頂点とする難関大学の出身者が、合格者の多くをしめるのは事実です。
でも、決して学歴で採用が判断されるわけでありません。
国家総合職の筆記試験問題はとても難しいので、高学歴の受験者のほうが高い得点をとりやすく合格者も多くなる傾向があります。
学歴以上に、筆記試験や面接の結果が大切だと理解しておきましょう。
ただし、高卒のひとが国家総合職を目指すのは難しいといえます。
国家総合職として採用されるには、人事院がおこなう公務員試験に合格したあと、各府省庁を訪問して内定をもらう必要があります。
たとえ人事院の試験をとっぱしても、官庁訪問で高卒のひとは残念ながらはじかれてしまう可能性が高いのです。
国家総合職の「倍率/難易度」
国家総合職のおもな試験区分の倍率は下表のとおりです。
(平成29年度試験)
試験種類 | 試験区分 | 採用予定 | 申込 | 1次試験合格 | 最終合格 | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|---|
院卒者試験 | 行政 | 70 | 606 | 363 | 196 | 3.1 |
大卒程度試験 | 政治/国際 | 20 | 1,391 | 117 | 56 | 24.8 |
法律 | 180 | 10,216 | 1,032 | 504 | 20.3 | |
経済 | 75 | 2,069 | 437 | 210 | 9.9 |
国家総合職のほかにも、公務員にはいろいろな種類があります。
種類ごとに試験の難易度をランキングにしました。
難易度は筆記試験や面接試験、採用人数などから総合的に判断しています。
- 国家総合職
- 国家一般職、国家専門職(国税専門官/財務専門官/労働基準監督官など)、国立大学法人等職員
- 地方上級(県庁/政令指定都市)、東京都庁
- 東京都特別区(東京都23区)
- 市役所(政令指定都市をのぞく)、警察官/消防官
試験の難易度は受験年度や、どの自治体(または勤務地)を受験するかによって変わります。
難易度ランキングは参考ていどにとどめてくださいね。
国家総合職の採用試験は、すべての種類のなかでもっとも難易度が高い試験です。
学歴が高くても関係なく落ちてしまう試験ですから、かんたんではありません。
つづいて、国家総合職ではどんな試験が課されるのか、試験内容を確認していきましょう。
国家総合職の「試験種類」
国家総合職の採用試験は「院卒者試験」「大卒程度試験」の2つに大きく分かれています。
それぞれ専門によっていろいろな区分があり、自分の得意なものを選んで受験することができます。
院卒者は大卒程度試験に申し込むことも可能です。
- 【受験資格】:30歳まで(受験翌年4月1日時点の年齢)かつ、大学院修士課程(または専門職大学院)を修了
- 【試験区分】:行政、人間科学、工学、数理科学/物理/地球科学、化学/生物/薬学、農業科学/水産、農業農産工学、森林/自然環境
- 【受験資格】:22~30歳まで(受験翌年4月1日時点の年齢)
- 【試験区分】:政治/国際、法律、経済、人間科学、工学、数理科学/物理/地球科学、化学/生物/薬学、農業科学/水産、農業農産工学、森林/自然環境
院卒者試験の「行政」区分、大卒程度試験の「政治/国際」「法律」「経済」区分は、ほかの試験区分にくらべて受験者数や内定者数が多く、もっとも一般的な試験です。
このサイトの「専門科目」カテゴリーの科目は、すべてこれらの区分で登場します。
ほかの試験区分の専門科目では、それぞれの専門にかんする問題が出題されます。
ここからは院卒者試験の「行政」区分、大卒程度試験の「政治/国際」「法律」「経済」区分について解説していきますね。
じつはもう1つずつ、院卒者試験には「法務」という区分が、大卒程度試験には「教養」という区分があります。
法務区分は司法試験の合格者が対象。
教養区分は既存の試験区分以外の専攻分野の学生、海外大学の学生、民間企業経験者などが対象です。
一般的な区分と試験内容がちがっていて、試験も春ではなく秋に行われます。
国家総合職の「試験科目/配点」
国家総合職の院卒者試験と大卒程度試験は、どちらも1次試験と2次試験に分かれています。
それぞれで課される試験種目や配点などはこちら。
院卒者試験 | 試験科目 | 配点 | 時間 | 問題数 |
---|---|---|---|---|
1次試験 | 基礎能力試験 | 2/15 | 2時間20分 | 30問 |
専門試験(択一式) | 3/15 | 3時間30分 | 40問 | |
2次試験 | 専門試験(記述式) | 5/15 | 4時間 | 3題 |
政策課題討議試験 | 2/15 | 1時間30分 | ― | |
人物試験 | 3/15 | ― | ― |
大卒程度試験 | 試験科目 | 配点 | 時間 | 問題数 |
---|---|---|---|---|
1次試験 | 基礎能力試験 | 2/15 | 3時間 | 40問 |
専門試験(択一式) | 3/15 | 3時間30分 | 40問 | |
2次試験 | 専門試験(記述式) | 5/15 | 4時間 | 3題 |
政策論文試験 | 2/15 | 2時間 | 1題 | |
人物試験 | 3/15 | ― | ― |
基礎能力試験と専門試験の配点を合わせると、ぜんたいの2/3をしめます。
筆記試験のウェイトは、人物試験(面接)にくらべてとても大きいですよね。
ほかの公務員試験より試験時間が長いのも特徴です。
最終合格者は1次試験と2次試験すべての得点を合計して決定されます。
それでは、試験種目の内容を1つずつ確認していきましょう。
基礎能力試験
国家総合職の基礎能力試験は、よく「教養試験」とよばれるものと同じです。
各科目からぜんぶで、院卒者試験は30問、大卒程度試験は40問が出題されます。
どちらの試験でも問題の内容は共通です。
各科目ごとの出題数は、
(平成29年度試験)
分野 | 科目 | 出題数 | |
---|---|---|---|
院卒者試験 | 大卒程度試験 | ||
一般知能 | 現代文 | 8 | 4 |
英文 | 7 | ||
判断推理 | 16 | 7 | |
数的推理 | 7 | ||
資料解釈 | 2 | ||
一般知識 | 時事 | 3 | 3 |
法律 | 1 | 1 | |
政治 | 1 | ||
経済 | 1 | ||
物理 | 1 | 1 | |
化学 | 1 | ||
地学 | 1 | ||
日本史 | 1 | 1 | |
世界史 | 1 | ||
地理 | 1 | ||
思想 | 1 | ||
合計 | 30 | 40 |
法律や物理などの一般知識分野にくらべて、英文や判断推理といった一般知能分野のほうがはるかに出題数が多くなっています。
専門試験(択一式)
国家総合職の専門試験(択一式)は、試験区分ごとに出題科目や出題数がことなります。
全体として答えなければいけない回答数は40問で同じです。
回答が必須の問題と、任意で選択できる問題に分かれています。
難易度はとても高いことが特徴です。
大卒程度試験の科目別出題数を確認してみましょう。
政治/国際区分の出題数は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
政治学 | 10 | 25問必須回答 |
国際関係 | 10 | |
憲法 | 5 | |
行政学 | 5 | 30問中 15問選択回答 |
国際事情 | 3 | |
国際法 | 5 | |
行政法 | 5 | |
民法 | 3 | |
経済学 | 3 | |
財政学 | 3 | |
経済政策 | 1 | |
経済事情 | 2 | |
合計 | 55 | 40 |
法律区分の出題数は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
憲法 | 7 | 31問必須回答 |
行政法 | 12 | |
民法 | 12 | |
商法 | 3 | 18問中 9問選択回答 |
刑法 | 3 | |
労働法 | 3 | |
国際法 | 3 | |
経済理論 | 2 | |
財政学 | 2 | |
経済事情 | 2 | |
合計 | 49 | 40 |
経済区分の出題数は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
経済原論 | 16 | 31問必須回答 |
財政学 | 4 | |
経済政策 | 1 | |
経済事情 | 5 | |
統計学 | 3 | |
計量経済学 | 2 | |
経済史 | 2 | 15問中 9問選択回答 |
経済事情 | 1 | |
国際経済学 | 3 | |
経営学 | 3 | |
憲法 | 3 | |
民法 | 3 | |
合計 | 55 | 40 |
院卒者試験の「行政」区分を受験するばあい、専門試験(択一式)は大卒程度試験の「政治/国際」「法律」「経済」3つの区分から、1つの区分と共通する問題を選んで回答します。
専門試験(記述式)
国家総合職の専門試験の記述式は、マークシート方式の択一式とちがって、設問に対して1,000文字ていどで論述回答する試験です。
たとえば憲法の出題例は、
わが国に在留する外国人および内国法人それぞれについて、人権の保障とその限界を論ぜよ。
文章力があれば高得点がねらえるわけではなく、問いに対する深く正確な知識が要求されます。
出題数は、
院卒者試験 「行政」区分 (3科目選択) |
大卒程度試験 | ||
---|---|---|---|
「政治/国際」区分 (3科目選択) |
「法律」区分 (3科目選択) |
「経済」区分 (1科目必須 2科目選択) |
|
政治学 行政学 国際関係② 公共政策② 憲法 行政法 民法 商法 刑法 民事訴訟法 国際法 経済理論 財政学 経済政策 |
政治学 行政学 憲法 国際関係② 国際法 公共政策② |
憲法 行政法 民法 国際法 公共政策②※ |
経済理論(必須) 財政学 経済政策 公共政策②※ |
政策課題討議試験
国家総合職の院卒者試験では政策課題討議試験が登場します。
数名の受験者とグループを組んで、あたえられた問題についてディスカッションする試験です。
コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などが評価されます。
試験のながれは、
- 【資料配布】:問題設定や補足事項、討論の説明などが書かれた資料が配布される
- 【レジュメ作成】:配布された資料に目をとおし、自分の結論や根拠をレジュメとして用紙にまとめる(30分間ていど)
- 【ディスカッション】:6名ほどでグループになり、各自レジュメを発表してからディスカッションする(40分間ていど)
- 【個別発表】:ディスカッションを終えて最終的な自分の考えを発表する(10分間ていど)
英文をふくむ資料を提供されることが特徴です。
ボリュームのある日本語と英語の資料をすばやく理解して、レジュメを作成しなければいけません。
政策論文試験
国家総合職の大卒程度試験では政策論文試験が出題されます。
設問と参考資料が与えられ、自分の意見を1,200~1,600文字ていどで論述する試験です。
過去の出題例は、
- 【設問】:2050年において日本政府が優先的に取り組むべき政策はどのようなものか,あなたの見解を述べなさい
- 【参考資料】:「未来社会を描くために」「Competitiveness Issues Scoreboard」「今後40年のグローバル予測における『20の個人的アドバイス』」
創造性の豊かな論文を書く必要はありません。
参考資料を読みとき、出題者の意図をくみとって文章を組みたてることが大切です。
人物試験
国家総合職の人物試験とは面接のことです。
集団ではなく個別に面接がおこなわれます。
「コンピテンシー」とよばれる、成果に結びつく行動や能力をつかった面接方法を採用しています。
質問の中心は「そのときどう行動しましたか?」と、受験生の過去のエピソードから行動や結果を掘りさげること。
ほかの公務員試験にくらべて人物試験の配点が低いことも特徴です。
官庁訪問
国家総合職のばあい、試験で最終合格しただけでは採用になりません。
最終合格したあとに志望する官庁を訪問して、内定をもらう必要があります。
最終合格者のうち内定にいたる割合は30~40%ほどです。
官庁訪問は第1~5クールまで続きます。
クールをとっぱするごとに次のクールにも来るよう担当者から連絡があります。
第5クールまでたどり着いて結果がよければ、晴れて内々定がもらえる長い道のりの試験です。
クール | 日程(平成29年度) |
---|---|
1 | 7月5,6,7日 |
2 | 7月10,11,12日 |
3 | 7月13,14日 |
4 | 7月18日 |
5 | 7月19日 |
官庁訪問では「人事面接」と「原課面接」の2つがおこなわれます。
人事面接は一般的な面接のことです。
訪問者が各府省にとって適した人材かどうかが評価されます。
原課面接はじっさいに職員が働いている職場に行き、業務について説明を受けたり受験生から質問をする面接です。
民間企業にはない独特な形式ですよね。
ほかにも官庁によっては、受験生が集まっての施設見学や説明会、感想文の作成、プレゼンテーション発表などいろいろな試験が登場するばあいがあります。
1日のうちに面接がなんどもあって待ち時間も長いため、朝から夜遅くまで時間のかかる大変な試験です。
国家総合職の「試験日程」
国家総合職の試験日程と採用までのながれはこちら。
(平成29年度実施試験の日程)
- 【受験案内】:2月1日~(ホームページに掲載)
- 【受験申込み】:3月31日~4月10日(インターネットから行う)
- 【第1次試験】:4月30日
- 【合格発表】:5月12日
- 【業務説明会】:5月13日(内閣府人事局主催)、5月15日~5月29日と6月22日~6月23日(人事院主催)、5月中旬と6月中旬~下旬(各府省)
- 【第2次試験】:5月28日(筆記試験)、5月30日~6月16日(大卒程度試験の人物試験)、6月9日~6月16日(院卒者試験の政策課題討議と人物試験)
- 【最終合格発表】:6月30日
- 【官庁訪問】:7月5日~
- 【内々定】:7月19日~
- 【内定】:10月1日~
国家総合職の「勉強スケジュール」
国家総合職の対策期間がだいたい1年間あるばあいのスケジュール例はこちら。
試験種目 | 月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
7~12 | 1 | 2~4 | 5 | 6 | ||
基礎能力試験 | 一般知能 | ★ | ☆ | ☆ | ||
一般知識 | ☆ | ☆ | ||||
専門試験(択一式) | ★ | ★ | ★ | |||
専門試験(記述式) | ★ | ★ | ★ | |||
政策課題討議試験 | ☆ | ★ | ||||
政策論文試験 | ☆ | ★ | ||||
人物試験 | ☆ | ★ | ||||
官庁訪問 | ★ |
- 【★】:注力して取りくむ試験種目
- 【☆】:取りくむ試験種目
7~12月
試験勉強はまず基礎能力試験の「一般知能」と「専門試験の択一式」からはじまります。
一般知能の科目は出題数がとても多く、毎日コツコツと問題を解きつづけることで得点力がみにつきます。
専門試験の択一式は記述式対策の土台になるので、早くから学習しておきましょう。
1月~
年明けからは「一般知識」と「専門試験の記述式」の対策が開始です。
一般知識は出題数が少なく、範囲がとても広い科目ばかり。
専門試験の記述式と、3問が出題される一般知識の時事問題の学習に注力します。
2月~
「政策課題討議試験」「政策論文試験」「人物試験」の本番はまだ先です。
だからといって、1次試験がおわってから全部を一気に対策するのはむりがあります。
公務員予備校の添削指導や面接指導の予約が空いているうちに、少しずつすすめておきましょう。
5月
1次試験が終わると、2次試験の対策に集中できます。
専門試験記述式の追い込みです。
6月
官庁訪問は2次試験のあと2週間~1ヶ月くらいよゆうがあります。
対策はその間に取りくめば大丈夫です。
2次試験が終わる前でも、官庁業務説明会に参加することは忘れずに。
国家総合職の「合格ボーダーライン」
「筆記試験は何点くらい正解すれば合格できるの?」と気になりますよね。
1次試験の基礎能力試験と専門試験(択一式)をそれぞれ100点満点としたときの、得点率ボーダーラインはこちらです。
試験区分 | ボーダーライン | |
---|---|---|
院卒者試験 | 60% | |
大卒程度試験 | 政治/国際 | 65% |
法律 | 65% | |
経済 | 55% |
ボーダーラインは基礎能力試験と専門試験(択一式)の得点率が同じときのものです。
もし基礎能力試験の得点がボーダーラインより高ければ、専門試験(択一式)の得点は低くても合格できます。
試験区分によってバラつきはありますが、おおむね7割ていど得点できれば安心です。
国家総合職の「基礎能力試験科目の勉強法」
国家総合職の基礎能力試験の配点は2/15です。
院卒者試験は30問、大卒程度試験は40問が出題されます。
基礎能力試験は一般知能と一般知識にわかれます。
- 【一般知能】:現代文/英文、判断推理/数的推理/資料解釈
- 【一般知識】:時事、法律/政治/経済、物理/化学/生物/地学、日本史/世界史/地理/思想
出題数は一般知能のほうが圧倒的に多くなっています。
現代文/英文、判断推理/数的推理/資料解釈の学習を優先しましょう。
現代文/英文
現代文は難易度の高い問題が多く出題されます。
選択肢をブロックに分けて、1つずつ本文と一致するかどうか確かめて解く方法がおすすめです。
英文は平易な文章が多いですが、近年は難しい問題も登場しています。
政治、経済、科学、時事など専門的なテーマに対応できるよう、新聞やネットで英文にふれる機会をふやすことが大切。
現代文と英文どちらも、標準的で良問が多い国家一般職の過去問から先に取りくみましょう。
つづいて国家総合職の過去問がおわったら、さいごに国家専門職の問題にうつって対策を完ぺきにします。
きちんと時間をはかって解くことを忘れずに。
判断推理/数的推理/資料解釈
判断推理と数的推理ともに、とても複雑で難易度の高い問題が出題されます。
判断推理では図や表をいくつか用いて解く問題も多いです。
対応関係、順序関係、位置関係など頻出分野の基礎から理解するように勉強をすすめましょう。
数的推理は素数と素因数分解、比と割合、速さ、ニュートン算、図形、確率などの分野は難易度が高め。
苦手な分野をつくらないことがポイントです。
資料解釈の難易度はあまり高くないので、過去問にしっかり取りくんで確実に正解をねらいます。
時事
時事問題は過去2年間くらいの出来事から出題されるのが一般的です。
頻出テーマは科学技術、医療、社会保障、経済事情、国際事情、環境など。
細かなデータをむりやり覚えようとせず、大まかな方向性やながれを理解するのがおすすめです。
法律/政治/経済
法律、政治、経済をあわせて社会科学とよびます。
法律は憲法の人権と統治から、またはそのほかの法学一般や各法律の基礎知識から出題されます。
政治は国際関係の各国の政治制度、国際連合、核軍縮問題、国際機構からの出題が頻出です。
法律と政治は専門試験の憲法、政治学、国際関係の学習をすることでカバーできます。
仕上げに基礎能力試験の過去問に取りくみましょう。
経済は専門試験のそれと出題内容が大きくことなります。
基礎能力試験の経済として十分に対策する必要がありますよ。
物理/化学/生物/地学
物理、化学、生物、地学など自然科学の科目は、どれも広い分野からバランスよく出題されます。
すぐには得点力がつかないので、早いうちから問題になれておく必要があるでしょう。
勉強に手間がかかるわりに出題数がとても少ないので、中学生や高校生のころに履修していなかったひとは、すててしまっても問題ありません。
日本史/世界史/地理/思想
日本史は通史やテーマ史からの出題がほとんど。
文化、対外交渉、教育、戦乱、貿易、通貨などのテーマを確認しましょう。
世界史は出題範囲が広く、難易度も高めです。
あまり時間はかけず、よゆうがあれば「絶対王政以降の西洋史」にしぼって対策するのがおすすめ。
地理は高い難易度ではないですが、広い学習が必要になります。
思想の出題内容はワンパターンです。
西洋近現代、日本の近代思想、諸子百家、江戸時代の思想について、有名思想家の主著やキーワードを整理しておけば正解できます。
国家総合職の「専門試験科目(択一式)の学習法」
国家総合職の専門試験(択一式)の配点は3/15、出題数は院卒者試験と大卒程度試験どちらも40問です。
試験区分によって科目がことなります。
院卒者試験「行政」区分の受験者は、大卒程度試験「政治/国際」「法律」「経済」区分のなかから1つを選んで回答します。
「政治/国際」区分
「政治学」は10問が出題され、そのうち3問は英文問題です。
平成29年度試験ではのべ26人の学者名が登場しました。
どれも過去に出題例があるので、過去問演習をていねいに行うことがもっとも大切です。
英文問題には難しい単語もあらわれます。
おもな政治思想や政治理論の原文(英文)をチェックしておきましょう。
「国際関係」は10問の出題。
英文問題が3問をしめます。
きょくたんな難問はありません。
出題分野にバラツキはないので、はば広い分野の過去問演習に取りくむ必要があります。
時事用語集の学習もあわせてすすめていきましょう。
「行政学」は日本語問題が4問、英文問題が1問です。
覚えるべき重要知識はほかの公務員試験と同じなので、併願していればコストパフォーマンスが高い科目になります。
「法律」区分
「憲法」は7問の出題です。
標準的な難易度のため、高得点をねらえます。
ただ、問題は長文で、いちぶにひっかけの誤りがかくれていることが多くあるので注意が必要。
基礎事項を正確に記憶する学習法で、すばやく回答できるように練習しておきましょう。
「行政法」からは12問が出題されます。
頻出テーマは行政作用法と行政救済法の2つ。
全体的に難易度が高く、とても細かな知識まで問われるばあいがあります。
むやみに学習範囲を広げすぎず、重要事項を正確におぼえるようにするのがおすすめです。
「民法」は12問の出題。
難易度の高い問題が多く、出題分野にかたよりはありません。
単純正誤、妥当な組み合わせ、空欄補充、会話などいろいろな出題形式が登場します。
出題形式はとくしゅでも、過去問の知識で回答できる問題ばかりです。
過去問演習をたっぷりおこなって、高得点をねらいましょう。
「経済」区分
「経済」はミクロ経済とマクロ経済あわせて16問が出題されます。
それぞれ約半分ずつの出題数です。
ほとんどが計算問題で、難易度は高め。
基本的な解法からマスターして、だんだんと応用問題に取りくんでいきましょう。
「財政学」は4問の出題です。
財政学は暗記科目。
試験前年度の予算、予算制度、税制度、公債など頻出テーマをしっかりおさえることが大切です。
「経済事情」からは5問が出題されます。
日本経済は景気、消費、投資、金融、労働などが頻出。
国際経済ではアメリカ、中国、EU、インド、東南アジア、ロシア、ブラジルがよく登場します。
白書の暗記は効率がわるいので、時事参考書でポイントを理解しましょう。
国家総合職の「専門試験(記述式)の学習法」
国家総合職の専門試験(記述式)の配点は5/15です。
基礎能力試験と専門試験(択一式)を合わせた配点と同じですから、とても高いですよね。
4時間の試験時間で3題の答案を作成します。
難易度はかなり高めです。
問題文の内容を正しく理解し、必要な論点を適切な順番で構成し、制限時間内に論述しなければいけません。
配点と難易度の高さから、受験生によって大きな差がつきやすい試験です。
対策のステップ
- 択一式の学習をすすめる
- 主要分野ごとに論点、制度、条文などを整理する
- 主要テーマの答案をつくる
記述式の練習をする前に、まずは択一式の導入テキストと過去問演習に取りくみ、基礎事項を理解して論述の土台をつくるのが効果的です。
1つの分野がおわるたびに、論点や重要事項をノートにまとめておきます。
択一式の学習があるていど身についたら、記述式の頻出テーマについて答案をつくってみましょう。
とても大変ですが、できるだけたくさんの答案を書きあげれば得点力はあがりますし、試験で同じようなテーマが出題される可能性がとても高くなります。
記述式の対策をすると理解がより深まるので、択一式にも効果がありますよ。
答案作成のながれ
- 問題文をよく読む
- 答案の構成をつくる
- 答案を書く
いきなり答案を書きだすのはよくありません。
問題文をよく読んで、なにが問われているのかじっくり把握します。
次に答案の構成を考えましょう。
答案は全体の論理が一貫していなければならないため、はじめに設計図をつくっておく必要があるからです。
それから誤字脱字や文章のつながりに気をつけて答案を書きます。
最後の見直しを忘れずに。
国家総合職の「政策課題討議試験の学習法」
政策課題討議試験は国家総合職の院卒者試験でのみ課され、その配点は2/15です。
地方上級や市役所でよく登場する「集団討論」とのちがいは、
- 討議をする前に配布資料を読んで、レジュメを作成すること
- グループ全体としての結論を導く必要がないこと
レジュメ
レジュメ作成は難関です。
英文をふくむ数ページの資料に目をとおし、自分の意見を分かりやすくまとめる必要があります。
レジュメを見ながら各自の意見をはあくし、それに対して自分の主張を伝えたり、相手に発言をうながしながら討議はすすみます。
レジュメは自分の思考過程を分かりやすく書くことが大切です。
レジュメ作成のポイントはこちら。
- はじめに結論を示す
- 結論の根拠を箇条書きで述べる
- 結論のメリットとデメリット、想定される反論とその対策を説明する
- 英文資料は気にしすぎない
結論と根拠を書くことは基本ですよね。
根拠やメリットなどを説明するときは、配布された参考資料の記述を理由づけに使いましょう。
出題者の意図をくみとって論理を構成することが大切です。
英文の資料は難しめで、苦手なひとは時間内に読みとくのは大変かもしれません。
日本語の資料をきちんと活用することが優先なので、英文の読解に手間をかけすぎないよう注意が必要です。
レジュメを書き終わると別室に移動し、各自がレジュメの内容を発表してから討議がはじまります。
評価項目
試験の評価事項はおもに「積極性」「論理性」「協調性」「グループへの貢献性」です。
高評価をもらうためのポイントは、
- 前向きな発言で積極的に議論へ参加する姿勢を示す
- 結論、根拠、具体例の順番で発言する
- メンバーの意見を批判せず、受け入れる姿勢を示す
- わき道にそれた議論を正しい流れにもどす
積極性や論理性が重要ということは誰でも分かりますよね。
いがいと協調性やチームへの貢献性があたまからヌケてしまいがちなので、気をつけましょう。
国家総合職の「政策論文試験の学習法」
政策論文試験は国家総合職の大卒程度試験でのみ課され、その配点は2/15です。
一般的な「論文」とのちがいは、
- 英文をふくむ数ページの資料が配布されること
- 問題文がとても抽象的なこと
評価項目
試験の評価項目は形式面と内容面の2つに大きく分かれます。
形式面の具体的な評価項目例は、
- 【漢字/仮名使い】:漢字、送り仮名、仮名使いが正しいこと。略語や話し言葉がないこと
- 【解答用紙】:原稿用紙の使い方が正しいこと
- 【文字】:文字がていねいに書かれていること。文章が読みやすいこと
- 【文法】:主語と述語、目的語、接続詞、修飾語、句読点の使い方が正しいこと
- 【文体】:文体表現(~です。~ます。/~である。~だ。)が統一されていること
内容面の具体的な評価項目例は、
- 【問題把握】:問題の意図を正しく認識し、その問いに答えていること
- 【論理性】:文章が論理的に構成されていること
- 【独自性】:独創的な着眼点から内容を論述していること
- 【表現力】:文章がわかりやすく、正確に書かれていること
配布資料から出題者の意図を読みとって論文を構成することが、とくに大切です。
論文の構成
次のような構成で論述すると、評価が高いのでおすすめです。
- 【定義】:問題文に与えられたなかで中心的な語句を定義したうえで、現状や今後の予測を書く
- 【背景】:問題が起こっている要因を説明する
- 【問題点】:このままなにも解決策を取らなければ、どんなわるい影響がもたらされるのかを述べる
- 【解決策】:解決の方向性⇒方向性の根拠⇒具体的な解決策の流れで本論を展開する
- 【まとめ】:これから行政職員として、このテーマに対してどのように取りくんでいきたいかをアピールする
PCを使ってかまわないので、過去問や頻出テーマの答案をたくさんつくって練習しましょう。
書き方のコツが分かったら、本番のように時間をはかって原稿用紙に書きます。
答案はひとに見せて添削してもらうと効果的です。
国家総合職の「人物試験の学習法」
国家総合職の人物試験は面接のことで、その配点は3/15です。
基礎能力試験や政策論文試験よりも高い配点なので、気は抜けません。
2次試験の専門試験(記述式)が終わってから、2日~1週間くらいの間におこなわれます。
人物試験の特徴
- あらかじめ面接カードを記入して持参すること
- 面接カードを中心に面接がすすむこと
- 評価が低いと足きりになってしまうこと
面接カード
面接カードの設問は「志望動機」「力をいれて取りくんだこと」など。
自分がアピールしたいエピソードをちりばめて書くことが大切です。
面接はほとんど面接カードの回答について質問されます。
「そのとき困難だったことは?」「工夫したことは?」「どんな成果や学びがえられた?」と、深く掘りさげる質問がくり返されることが多いので注意が必要です。
評価が低いと、人物試験の結果だけで不合格になってしまいます。
面接カードを添削してもらったり、模擬面接をして十分に対策しておきましょう。
国家総合職の「官庁訪問のポイント」
最終合格したら、いよいよ官庁訪問にのぞみます。
官庁訪問の対策
- 官庁訪問する府省庁を3つ決める
- 訪問カードを記入する
- 訪問先の情報収集をする
官庁訪問では3つの府省庁を訪問することができます。
初日に訪問しないと採用されない府省庁もあるので、志望度が高いものから回るようにしましょう。
人物試験と同じように、官庁訪問では訪問カードがあります。
訪問カードに記入した内容について質問されますから、自分がアピールしたいエピソードをちりばめることが大切です。
あらかじめ訪問先の政策や部署について情報収集していると、面接で役立ちます。
ホームページ、パンフレット、説明会の資料、白書などに目をとおしておけば十分です。
人事面接と原課面接
人事面接では、「志望動機」「自己PR」「力をいれて取りくんだこと」「大学の研究内容」など頻出の質問が中心です。
「そのとき困難だったことは?」「工夫したことは?」「どんな成果や学びがえられた?」と、深く掘りさげられることが多いので、しっかりと考えをまとめてのぞむ必要があります。
原課面接では、情報収集した知識をもとに的確な逆質問をして志望の熱意をアピールします。
知識をひけらかすのではなく、「~と理解しましたが、じっさいはいかがでしょうか?」「~と考えています。ほかにも重要な論点はあるでしょうか?」と謙虚な姿勢を示しましょう。
1日のあいだに人事面接と原課面接はくり返しおこなわれます。
原課面接で職員と話して感じたことや、考えをあらためたことを人事面接で伝え、「自分の成長」をみせるよう心がけることが大切です。
国家総合職の「独学/予備校」
国家総合職を受験するひとの多くは公務員予備校にかよっています。
公務員予備校はお金がかかるので、どうしようか迷いますよね。
独学でも対策可能な試験種目
- 基礎能力試験
- 専門試験(択一式)
国家総合職の基礎能力試験と専門試験(択一式)は、独学でも合格レベルまで得点力を高めることができます。
どちらの試験の科目も、質の高い導入テキストや過去問題集がそろっているからです。
難関大学合格者や勉強に自信があるひとなら、市販の参考書をつかってひたすら問題演習に取りくめば合格点をこえることは難しくありません。
予備校で対策したほうがいい試験種目
- 専門試験(記述式)
- 政策課題討議試験
- 政策論文試験
- 人物試験
国家総合職の専門試験(記述式)の難易度の高さはピカイチです。
択一式の学習だけでは歯が立ちません。
政策課題討議試験と人物試験は、本番の形式で模擬練習をなんどもくり返すことが合格への王道です。
政策論文試験も答案を作成し、専門的なスキルがあるひとに添削してもらう必要があります。
公務員予備校では、専門試験(記述式)について頻出テーマ分析や、答案作成、添削指導など万全の対策ができます。
論文の添削や面接練習のサポート体制も十分です。
国家総合職は最難関の公務員試験。
よほど筆記試験に自信があったり、論文や面接対策の環境を自前で用意できるひと以外は、公務員予備校をつかう方法がおすすめです。

これで公務員試験「国家総合職」の解説はおしまいです。
おつかれ様でした。
国家総合職ってとにかく難しい試験ですよね。
どんな試験なのか、ちょっとだけ気になります。