

民法の条文は1,000を超えていて、憲法や行政法などほかの法律系科目に比べて多くの論点があります。
民法を苦手にしている受験生は多いですよね。
でもじつは、正しい方法で勉強を続ければ、だれでも本番で高得点を狙える科目なんです。
この記事では、
- 民法の出題分野と形式
- 民法の頻出分野と難易度
- 民法の効果的な勉強方法
- 民法のおすすめ参考書
- 民法の試験種類ごとの勉強ポイント
をすべて解説します。
民法を得意科目にして、本番で高得点をめざしましょう!
公務員試験「民法」を知ろう!
まずは、民法がどんな科目なのか見てみましょう。
それから難易度や頻出分野を確認し、大まかな勉強の方針を立てます。
どんな科目なの?
民法のおもな分野、出題数、出題形式は次のとおりです。
いまは「ふ~ん。そうなんだ」くらいに読み流して大丈夫ですよ。
分野は6つ
民法は6つの分野に分けられます。
- 【総則】:権利能力/意思能力/行為能力/失踪宣告、法人、意思表示、代理、無効/取り消し、条件/期限、時効
- 【物権】:物権総説、物権変動、即時取得、占有、所有権、共有、用益物権
- 【担保物権】:留置権、質権、抵当権、譲渡担保
- 【債権総論】:債務不履行、債権者代位権/詐害行為取消権、連帯債務/保証債務、債券譲渡、債券消滅
- 【債権各論】:契約総論、売買、賃貸借、事務管理、不当利得、不法行為
- 【家族法】:婚姻、親子、相続、遺贈
- 民法の参考書は各分野を【民法Ⅰ】と【民法Ⅱ】の2つに分けています。試験では2つ合わせて1つの民法です。
- 【民法Ⅰ】:総則、物権、担保物件
- 【民法Ⅱ】:債権総論、債権各論、家族法
出題数は多め
専門試験で民法の問題はどれくらい出題されるのかというと、
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
民法の出題数 | 12 | 10 | ― | 10 | 4 | 4 |
全体の回答数 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 |
全体の出題数 | 49 | 80 | ― | 55 | 40 | 40 |
回答必須/選択 | 必須 | 選択 | ― | 選択 | 必須 | 必須 |
受験案内 | 国総合 | 国一般 | 労基官 国税官 財務官 |
特別区 | ― | ― |
- 【国総合】:国家総合職(法律区分)
- 【国一般】:国家一般職
- 【国専門】:国家専門職(労働基準監督官、国税専門官、財務専門官)
- 【特別区】:東京都特別区(東京都23区)
- 【地上級】:地方上級(道府県庁、政令指定都市)
- 【市役所】:市役所上/中級(政令指定都市をのぞく市役所)
すべての試験種で多く出題されていますよね。
民法が選択科目になっている試験種もありますが、ほとんどの受験生は選択するため、公務員試験において民法はとてもウェイトが大きい科目だといえます。
受験案内にはそのほかの科目の出題数も掲載されていますから、ぜひ参照してみましょう。
※【国家専門職】は各試験種によって民法の出題数や必須/選択が分かれるため、ここでは割愛しています。
出題形式は6つ
問題の出題形式は大きく6通りです。
- 【五肢択一】:「次の記述のうち、妥当なのはどれか?」
- 【妥当な組み合わせ】:「次の記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか?」
- 【事例】:「~である。この場合に関する記述のうち、妥当な(もののみをすべて挙げている)のはどれか?」
- 【学説】:「~について次の2説がある。A説の立場からの記述の組み合わせとして妥当なのはどれか?」
- 【長文の空欄補充】:「次の文章の空欄に入るものの組み合わせとして妥当なのはどれか?」
- 【対話の正誤判断】:「次の甲と乙の会話中の下線部のうち、妥当なものの組合せはどれか?」
これまでは【五肢択一】や【事例】の出題形式がメインでした。
ですが最近、五肢択一から【妥当な組み合わせ】への出題形式のシフトが目立ってきています。
妥当な組み合わせの問題は、五肢択一よりも正確な知識が求められるので注意が必要です。
さらに国家総合職では、【長文の空欄補充】や【対話の正誤判断】などバラエティーに富んだ出題が多くみられます。
ここまでを振り返ると、「覚えることや出題数が多くて大変そうだな~」と思いますよね。
それでは、試験の問題はどれくらい難しいのでしょうか?
難易度と頻出分野を確認してみましょう。
難易度と頻出分野をチェック
公務員試験の試験種別に、民法の頻出分野と難易度を表にまとめました!
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
総則 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
物権 | △ | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
担保物権 | △ | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
債権総論 | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | △ |
債権各論 | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ |
家族法 | △ | △ | △ | △ | △ | △ |
難易度 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
- 【頻出分野】は「◎:とてもよく出る」「〇:よく出る」「△:出る」の3つに分類しています。
- 【難易度】は「★:とても易しい」「★★:やや易しい」「★★★:標準」「★★★★:やや難しい」「★★★★★:とても難しい」の5段階で表示しています。
- 個人の所感により作成したものです。
頻出分野はぜんぶ!?
△が付いている「あまり頻出ではない分野」に注目です。
まずは【家族法】。すべての試験種であまり出題頻度は高くありませんね。
なら、勉強しなくてもいいのでしょうか?
じつは家族法は他の分野に比べて簡単な分野なんです!
勉強するのに時間はかかりませんし、頻出ではなくても出題されることはもちろんあるので、捨ててしまうのはもったいないですよね。
よほど本番まで期間が短くせっぱ詰まっている状況でなければ、勉強しておきましょう。
次に【国家総合職】に注目です。家族法の他にも【物権】と【担保物権】が△ですね。
たしかに他の分野に比べれば出題頻度は低め。
ですが忘れてはならないのは、国家総合職の民法は出題数がとても多いことです。
物権と担保物権といえども毎年1,2問が出題されるので、対策は必須なんです。
続いて【国家専門職】では国家総合職と同様に【物権】と【担保物権】の出題頻度はあまり高くありません。
国家専門職の試験では民法全体の出題に占める【総則】の割合がとても高いことが理由です。
総則に比べれば物権と担保物権の出題数は少ないですが、それでも毎年1問は出題されていますから、勉強しておく必要があるわけです。
注目の難易度は…?
国家総合職は問題が長文で、妥当な組み合わせの出題形式が多いため難しいでしょう。
ほかの試験種はやや難しいていどですね。
頻出分野と難易度の話をまとめると、
- どの試験種でも、すべての分野から出題される!
- 勉強の分量が多く、難易度はやや高い!
勉強の方針
ここまでをふまえて、民法の大まかな勉強方針を次のように決めましょう。
- 頻出ではなくてもすべての分野をつぶす!
- なるべく早いうちから勉強にとりかかる!
頻出ではなくてもすべての分野をつぶす
民法の6つの分野のなかで【家族法】はあまり出題頻度が高くないけれど、問題はかんたんなので対策しておこうと伝えましたね。
捨てる分野を作らず、参考書のとおりの順番で勉強をすすめることが大切です。
民法は各分野が完全に独立した内容になっているわけではなく、相互に関連しているんです。
はじめは分からない問題も、後に学んだ知識が加わると理解できるようになりますよ。
なるべく早い時期から勉強にとりかかる
地方上級や市役所上/中級を受験するときの、おすすめ勉強順番はこちらです。
民法は、ほかの法律系科目や経済系科目のなかでもっとも分量が多いといわれています。
そしてすべての分野を勉強すると決めましたので、民法を後回しにすることは得策ではありませんよね。
おすすめの勉強順番は、はじめに憲法を終え、その後に民法です。
憲法は民法や行政法とならんで主要法律系3科目に数えられます。
判例を覚えるスタイルの勉強法なため、法律を初めて学ぶひとでもとっつきやすい科目。
憲法の学習をとおして、法律系科目に共通する独特の「言い回し」や「考え方」を身につけることができます。
その後に民法を学習するとき、法律の考え方の下地があると理解が早まるわけですね。

民法の特徴がよくわかりましたね。
それではいよいよ、公務員試験の民法で高得点をとる勉強法を解説していきますよ。
公務員試験「民法」が得点できる勉強法!
民法を勉強するとき、本番直前まで心にとどめてほしいことがあります。
それをつねに意識しながら、導入テキストと過去問題集の使い方をマスターして学習していきましょう。
大切な3つのポイント
- 公務員試験に必要な限度の知識をつける!
- 分からなくても繰り返し解く!
- 民法ノートをつくる!
POINT.1 公務員試験に必要な限度の知識をつける
民法という学問の範囲は膨大です。でも公務員試験の民法の分量はそこまでではないんです。
どういうことだと思いますか?
弁護士など法律家を目指すひとは民法を広く深く学ぶ必要があります。
いっぽう公務員試験は、限られた期間でどれだけ効率的にたくさんの科目を学習できるかをはかる試験。
公務員試験で民法すべての論点から出題して問題のレベルを上げてしまうと、受験者の負担が民法にかたよって、試験本来の意味がなくなってしまいますよね。
試験問題をつくるひとはそれを考えて、過去に出題した問題を参考にして新しい問題を作成しているんです。
つまり民法の勉強は過去問の理解がもっとも重要。
目指すのは過去問が解けるだけの知識の習得です。
学習がすすむとつい不安に駆られ、勉強範囲を広げたくなりがち。
たくさんの参考書や過去問題集に手をつけ、完璧を目指そうとしてしまうんです。
ですが新しく類似の知識を知りすぎることは、これまで築いた知識をあやふやにする可能性があります。
それに中途半端な知識を身につけても、本番で正解を導くことはできませんよね。
過去問題集は出題者が受験者に知っていてほしい知識だけが凝縮されています。
まずは一冊の過去問題集を完璧に理解することに集中し、余力があれば過去問を解くうちに生じた疑問を解決するように勉強の範囲を広げてみましょう。
POINT.2 分からなくても繰り返し解く
勉強をはじめたばかりの頃は、問題を読んでも「さっぱり分からないな」と思うのではないしょうか。
それでもあきらめず、あるいは1つの問題が分からなくて調べるのに半日を使うなんてことはせず、どんどんと解きすすめていきましょう。
過去問題集を何周もするうちに、悩まなくてもからだが反応してすらすらと解答できるようになる日がやってきます。
深く考え込まずに「そういうものか」と割り切って、たんたんと繰り返し問題を解き続けることが大切です。
POINT.3 民法ノートをつくる
過去問に取り組んでいると、「この問題はこれが正解だけど、この場合はどうなんだっけ?」と混乱してくることがよくあります。
そんなとき、知識を整理する自分だけの【民法ノート】をつくっておくと役立ちますよ。
つくり方は簡単。よく間違う論点や、覚えにくい知識をノートにまとめるだけです。
過去問題集を解きながら、解答ページやレジュメから重要だと思うポイントを抜き取っていく方法がおすすめ。
いろいろな問題を解くうちに、どんどん追記されて便利になっていくはずなので、ぜひ試してくださいね。
例えばこんな感じでまとめます。
【例外的に定める無過失責任主義の規定】
- 無権代理人の責任
- 売主の瑕疵担保責任
- 土地工作物所有者の責任
もしも「無過失で責任を負う場合」についての問題が出題されれば、一発で解答できてしまいますよね。
おすすめ参考書と使いかた
参考書選びはとても重要。
数ある参考書のなかで、おすすめはこちらです。
- 【郷原豊茂の民法まるごと講義生中継Ⅰ,Ⅱ】:導入テキスト
- 【公務員試験 新スーパー過去問ゼミ 民法Ⅰ,Ⅱ】:過去問題集
- 【公務員試験 合格の500】:総仕上げ
参考書の特徴やおすすめする理由を知りたいときは、この記事を読んでくださいね。
よい参考書をえらんだら、参考書を正しく使って勉強することが大切。
大まかな流れは次のとおりです。
- まる生を一気に読む!
- スー過去をくり返し解く!
- 合格の500を解く!
勉強の効果をもっとも高める参考書の使い方を、くわしく知りたいときはこの記事を読んでくださいね。
試験種類ごとの学習ポイント
公務員試験には国家総合職や国税専門官、地方上級などたくさんの種類があります。
試験の種類ごとに、民法の効果的な学習方法はちがうんです。
自分が志望するところの学習ポイントをおさえましょう。
国家公務員や地方上級、東京都庁、特別区、裁判所職員、国立大学法人等職員はとくに難関の公務員試験です。
「民法の独学はちょっと自信がない…」と感じたひとは、公務員予備校の活用をかんがえてみましょう。
公務員予備校は、質の高い講師やテキストがそろっているのでおすすめです。

これで民法の勉強法の解説は終わりです。おつかれ様でした。
民法は分量が多く、耳慣れない言葉が続くため、「なんだか難しそうだな」と感じるかもしれません。
ですが紹介した方法で勉強を続ければ、ほかの受験生に差をつけることができる科目です。
本番で高い得点が取れることを願ってます!
民法ってなんだか使う言葉が難しいし、出題範囲も広くて苦手なイメージがありました。