

小中学校では作文をたくさん書きながら、原稿用紙の使い方や文法を習います。
でも公務員試験を受けるみなさんは、細かいルールはもうあまり覚えていないですよね?
論文試験は内容が優れていることのほかに、「文章が正しいかどうか」も形式面として採点基準になります。
形式面の採点は減点法。
例えばある漢字を間違って記憶していたら、その漢字を使うごとに知らないうち減点され続けてしまうので、こわいですよね。
公務員試験の論文で、おさえておくべき正しい文章のポイントは多くありません。
すべて解説しますので、覚えてしまいましょう。
目次
公務員試験【論文】正しい書き方1.「原稿用紙の使い方」
原稿用紙の使い方はルールがしっかり決まっています。
ルールを無視して文章を書いてしまうと、かくじつに減点対象となるので気をつけましょう。
原稿用紙の使い方でおさえるポイントはこちらです。
- 【タイトルと名前】:タイトルと名前は書く必要がない場合がほとんどです。指示があるときに書きましょう
- 【段落の書き始め】:段落の書き始めは1マス空欄にします
- 【句読点】:句読点「。」「、」は、ふつうの文字と同じように1マスに1つずつ書きます。句読点が行の最後のマス目にくるときは、行の最後のマス目に文字と一緒に書きます(次の行の先頭のマスに書かない)
- 【小文字】:小文字の「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」などは、ふつうの文字と同じように1マスに1つずつ書きます。小文字は句読点とちがって、行の先頭のマスにも書くことができます
- 【英数字】:数字は縦書きなら漢数字、横書きなら漢数字と算用数字どちらも使えます。英字は縦書きなら横に寝かせて表記します。数字と英字(アルファベット)は、1マスに2文字ずつ書きましょう。ただし略称のばあいは1マスに1文字です(OECDなど)
公務員試験【論文】正しい書き方2.「漢字/仮名の使い方」
漢字
漢字や仮名の誤字あるいは脱字は、かくじつに減点となります。
とくに同音異義語や字形のまちがいやすい漢字には注意が必要です。
論文でよくみられる誤った用法は、
- 市民に施設を×「解放」する⇒〇「開放」
- 法律が×「試行」された⇒〇「施行」
- 国民の強い×「感心」が寄せられている⇒〇「関心」
- 最低限度の生活を×「保証」している⇒〇「保障」
- 質問に×「解答」する⇒〇「回答」
- 達成に×「不可決」な要素⇒〇「不可欠」
- 数値が×「除々」に改善した⇒〇「徐々」
- 指示は×「適格」である⇒〇「的確」
- 求められるのは×「完壁」な結果⇒〇「完璧」
- 背景には×「価値感」の多様化がある⇒〇「価値観」
覚えまちがいはないか、確認しておきましょう。
試験本番で「どっちが正しいんだっけ?」と分からなくなったときは、無理せずほかの言葉で言い換えてみることがおすすめ。
たとえば「徐々に~」ではなく「段々と~」というぐあいです。
仮名
送り仮名や仮名遣いも、まちがいやすい事項です。
論文でよくみられる誤った送り仮名は、
- ×「短かい」⇒〇「短い」
- ×「暖い」⇒〇「暖かい」
- ×「確める」⇒〇「確かめる」
- ×「志ざす」⇒〇「志す」
- ×「脅やかす」⇒〇「脅かす」
- ×「恐しい」⇒〇「恐ろしい」
- ×「健か」⇒〇「健やか」
- ×「柔か」⇒〇「柔らか」
- ×「蓄わえる」⇒〇「蓄える」
- ×「紛わしい」⇒〇「紛らわしい」
- ×「育くむ」⇒〇「育む」
紛らわしい仮名遣いは、
- ×「一人づつ」⇒〇「一人ずつ」
- ×「少しづつ」⇒〇「少しずつ」
- ×「力ずく」⇒〇「力づく」
- ×「こずかい」⇒〇「こづかい」
- ×「あるいわ」⇒〇「あるいは」
- ×「もしくわ」⇒〇「もしくは」
- ×「ろおそく」⇒〇「ろうそく」
同音異義語と同じように送り仮名と仮名遣いも、自信がないときはほかの言葉で言い換えるのが安全です。
公務員試験【論文】正しい書き方3.「主語と述語の対応」
主語と述語が正しく対応していないと、文章の意味が正しく伝わらず、高い確率で減点されます。
文章を書き慣れていないひとに多いミスなので、はじめのうちは自分の文章をしっかりと読んでチェックしましょう。
主語と述語が対応していない文章の例と、それを正しく直した文章がこちらです。
- 【誤った文章】:行政職員として取り組みたい業務は、地域に飛び出し、市民と協働してまちづくりに汗を流す仕事がしたい。
- 【正しい文章】:行政職員として取り組みたい業務は、地域に飛び出し、市民と協働してまちづくりを担う仕事である。
主語と述語が対応する文章を書くためには、「1つの文章に主語と述語は1つずつ入れる」ことを意識すると効果的です。
これを「ワンセンテンス・ワンテーマ」といいます。
- 【誤った文章】:少子高齢化や価値観の多様化によって、地域コミュニティのつながりが弱まったといわれており、地域コミュニティの希薄化は、地域の防犯や防災機能は低下することにつながっている。
- 【正しい文章】:少子高齢化や価値観の多様化によって、地域コミュニティのつながりが弱まったといわれている。そして地域コミュニティの希薄化は、地域の防犯や防災機能の低下をもたらしている。
公務員試験【論文】正しい書き方4.「修飾語/接続詞/副詞の使いかた」
修飾語
ほとんどの文には修飾語が付いています。
修飾語を置く位置は決まっていませんが、誤読を招いて減点されないよう注意が必要です。
「修飾語は修飾される語のできるだけ近くに置く」ことを覚えておきましょう。
「短い修飾語は長い修飾語より後に置く」ことも大切です。
- 【不親切な位置】:男性の女性に比べて著しく低い育児休暇取得率は、少子化の一因となっている。
- 【好ましい位置】:女性に比べて著しく低い男性の育児休暇取得率は、少子化の一因となっている。
接続詞
接続詞は前の文と後の分の関係を示す言葉です。
それぞれの役割が決まっているので、まちがって用いると減点になります。
- 【順接】:前の文を原因として結論を表す。「だから」「したがって」「そこで」
- 【逆説】:前の文と対立する内容を表す。「だが」「しかし」「とはいえ」
- 【並列】:前の文と同列のことを挙げる。「そして」「また」「さらに」
- 【補足】:前の文に補足説明する。「ただし」「なお」「もちろん」
- 【対比】:前の文と比べたり、どちらかを選んだりする。「あるいは」「それとも」「もしくは」
- 【転換】:前の文と話題を変える。「さて」「ところで」「では」
接続詞は文と文の関係を示し、適切に用いると文章に理論的な印象が加わります。
でも、たくさんの文に接続詞を付けてしまうと、文章全体がくどくなって採点者にいい印象を与えません。
「順接」の接続詞はなくても意味がつうじることが多いので、少し省いて文章にリズムをもたせるのがおすすめです。
反対に「逆説」の接続詞は必ず必要なので、付け忘れないよう注意しましょう。
副詞
修飾語と同じように、副詞は修飾される語のできるだけ近くに置くようにしましょう。
- 【不親切な位置】:災害時の対応を検討するさいは、絶対に高齢者や障害者など災害弱者となりうる存在を忘れてはならない。
- 【好ましい位置】:災害時の対応を検討するさいは、高齢者や障害者など災害弱者となりうる存在を絶対に忘れてはならない。
副詞のなかには、とくに間違いやすい「呼応」というものがあります。
呼応の副詞を使うときは後の文で書く言葉が決まっているので、用法を誤ると減点になります。
- 【打消し】:「決して~ない」「とうてい~ない」「めったに~ない」
- 【推量/疑問】:「おそらく~だろう」「なぜ~か」
- 【仮定】:「もし~なら」「たとえ~ても」
- 【理由】:「なぜなら~から」
公務員試験【論文】正しい書き方5.「句読点の打ち方」
読点
文中に打つ「、」を読点といいます。
読点の打つ位置に決まりはありませんが、適切に読点を使ことで文章はとても読みやすくなり、採点者も誤読をしにくくなるので効果的です。
- 【長い主語や目的語の後】:「子供の見守り機能を担っていた地域コミュニティのつながりは、失われつつあるといわれている。」
- 【複文(主語と述語が2セット)の区切り】:「住民による自発的な再生は困難であり、行政による支援が必要とされている。」
- 【接続詞の後(次の分節を含んでもよい)】:「しかし、男性の育児休暇取得率は低いままである。」「しかし以前として、男性の育児休暇取得率は低いままである。」
- 【並列関係にある単語の区切り】:「わが国の社会保障制度は社会保険、社会福祉、公的扶助、公衆衛生および医療から構成される。」
- 【連続する漢字や仮名の区切り】:「当時、日本は高度経済成長期にあり、行政に対する住民のニーズは『より豊かな生活』で画一化していた。」
- 【誤解釈を防ぐため】:「自治体は財政が逼迫しながらも、多様化する住民ニーズに応える必要がある。」「自治体は、財政が逼迫しながらも多様化する住民ニーズに、応える必要がある。」
読点は少なくても多くても、読みにくい文章になってしまいます。
1文に1~2個ていどを目安に読点を打つと、バランスがよくなるのでおすすめです。
句点
文末に打つ「。」を句点とよびます。
原稿用紙を使って文章を書くばあい、カギカッコのなかの最後の文末は、終わりのカッコ(」)と同じマスに句点を打つというルールがあるので気をつけましょう。
文末で必ず打つほかは、句点にかんするルールはとくにありません。
もっとも大切なことは、文章を短く区切るために意識して句点を使うことです。
1文が100文字や200文字もあると、採点者は読みづらく、文法も間違いやすくなります。
読みやすい長さは1文あたり50文字ていどといわれているので、覚えておきましょう。
公務員試験【論文】正しい書き方6.「話し言葉/俗語/「ら」抜き言葉」
減点される可能性があるので、論文で話し言葉や俗語は使わないようにしましょう。
- 【話し言葉】:×「でも」⇒〇「しかし」、×「やっぱり」⇒〇「やはり」、×「すごく」⇒〇「とても」、×「いっぱい」⇒〇「たくさん」、×「たぶん」⇒〇「おそらく」
- 【俗語】:×「ライン」⇒〇「SNS」、×「スマホ」⇒〇「携帯電話(スマートホン)」、×「コンビニ」⇒〇「コンビニエンスストア」
- 【「ら」抜き言葉】:×「食べれる」⇒〇「食べられる」、×「来れる」⇒〇「来られる」、×「見れる」⇒〇「見られる」

これで公務員試験「論文の正しい文章の書き方」の解説はおしまいです。おつかれ様でした。
この記事のまとめです。
- 原稿用紙はマス目の使い方を間違えると減点
- 漢字や仮名は間違えると減点。自信がなければ言い換えよう
- 主語と述語は1文に1つずつにして、間違いをさける
- 修飾語や副詞は修飾される言葉の近くに置く。接続詞は使い過ぎに注意
- 句読点は1文50文字、1~2個の読点が目安
- 話し言葉は使わない
ふだん文章を書き慣れてないと、「文章を正しく書く」って意外と難しかったです。