

全国各地を勤務地として活躍する労働基準監督官は、人気の公務員試験です。
併願先の1つにえらぶ受験生も多くいます。
でも最初は、「労働基準監督官ってどんな仕事?」「どんな勉強をしたらいいの?」と疑問に思いますよね。
労働基準監督官のなりかたや難易度、試験科目や学習のポイントをすべて解説します。
労働基準監督官の「仕事内容」
労働基準監督官は労働条件の確保や向上、働くひとの健康や安全を守る厚生労働省の専門職員です。
各都道府県の労働局や、第一線機関として全国に321ある労働基準監督署などで働いています。
労働基準監督官のおもな仕事はこちら。
- 監督業務
- 司法警察事務
- 安全衛生関係業務
- 労働補償業務
監督業務
労働基準監督官は定期的に企業へ立ち入り、労働基準法などの法令に違反する状態がないかどうかチェックをおこないます。
トラブルにあっている労働者から相談をうけて立ち入ることもあります。
じっさいに法令違反が確認されたときは事業主に改善をうながします。
法の趣旨をていねいに説明し、問題が再発しないよう指導することも大切な仕事です。
司法警察事務
労働基準監督官の指導にしたがわなかったり、悪質な法令違反をくり返す事業主に対しては、司法警察権限を行使して書類送検の手続きをとることがあります。
ときには張り込みや強制捜査、取り調べなどをおこなう、権限と責任の重い業務です。
安全衛生関係業務
労働安全衛生法にもとづいて、労働者の安全と健康を確保されるよう指導します。
講習会やパンフレットなどで外部に情報を発信する機会も多い仕事です。
アイデアしだいで、どんどん新しいことを実行できる可能性があります。
労災補償業務
労災補償業務は、通勤や仕事が原因でケガや病気を負ったひとに、各種の補償をおこなう仕事です。
過労死が注目されるなか、労働基準監督官の役割はますます高まっています。
窓口や電話で労災にかんする相談にのることも、日常的な業務のひとつです。
労働基準監督官の「研修」
労働基準監督官は採用直後から、専門職としてふさわしい知識や技能を習得するため、充実した研修制度が用意されています。
- 【実地研修(前期)1.5か月】:労働基準監督署で「労働基準行政の概要」「実務補助」「工場見学」など
- 【中央研修(前期)1.5か月】:労働大学校で「一般法学」「労働基準関係法令」など
- 【実地研修(後期)2か月】:労働基準監督署で「相談業務」「各種届出」「業務実施要領」など
- 【中央研修(後期)1.5か月】:労働大学校で「一般法学」「労働基準関係法令」など
- 【実地訓練5.5か月】:労働基準監督署で実務
労働基準監督官の「転勤/異動/昇任/年収」
労働基準監督官は各都道府県の労働局や全国各地にある労働基準監督署、あるいは厚生労働省本省で働くことが一般的です。
日本全国で転勤の可能性があります。
将来は生活の本拠となる都道府県の労働局や、その管下にある労働基準監督署を中心に勤務します。
労働基準監督官の業務は財政や金融、経済調査、広報など多様。
だいたい2,3年のサイクルで異動するのが一般的です。
採用からしばらくは労働基準監督署で実務経験をつみます。
その後は努力しだいで労働局長や労働基準監督署長などへ昇任することができます。
公開されている採用初年度の給与例はこちら。
(東京都特別区内に勤務するばあいの平成29年4月1日の給与例)
大卒程度試験 |
---|
215,880円 |
労働基準監督官の「難易度/倍率」
労働基準監督官のほかにも、公務員にはいろいろな種類があります。
種類ごとに大卒程度試験の難易度をランキングにしました。
難易度は筆記試験や面接試験、採用人数などから総合的に判断しています。
- 国家総合職
- 国家一般職、国家専門職(国税専門官/財務専門官/労働基準監督官など)、国立大学法人等職員、裁判所職員
- 地方上級(県庁/政令指定都市)、東京都庁
- 東京都特別区(東京都23区)
- 市役所(政令指定都市をのぞく)、警察官/消防官
労働基準監督官の採用試験は、国家総合職についで難易度が高い試験です。
学歴が高くても関係なく落ちてしまう試験ですから、かんたんではありません。
試験の難易度は受験年度や、どの試験区分を受験するかによって変わります。
難易度ランキングは参考ていどにとどめてくださいね。
労働基準監督官の倍率は下表のとおりです。
(平成29年度試験)
試験区分 | 採用予定 | 申込 | 1次試験合格 | 最終合格 | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|
労働基準監督官A | 185 | 2,835 | 841 | 339 | 8.4 |
労働基準監督官B | 45 | 876 | 498 | 139 | 6.3 |
合計 | 230 | 3,711 | 1,339 | 478 | 7.8 |
労働基準監督官は採用予定人数が少ないため、倍率が高くて難関の試験です。
試験区分についてはこれから解説していきますね。
労働基準監督官の「試験種類」
国家公務員試験には多くのひとが受験する「大卒程度試験」のほか、国家総合職には「院卒者試験」があり、国家一般職には「高卒者試験」があります。
いっぽう労働基準監督官試験は「大卒程度試験」ひとつしかありません。
労働基準監督官の試験区分には「A」と「B」の2つがあります。
A区分は文系科目、B区分は理系科目の試験です。
どちらの区分も「22~30歳まで(受験翌年4月1日時点の年齢)」が受験資格です。
労働基準監督官の「試験科目/配点」
労働基準監督官の試験は1次試験と2次試験に分かれています。
試験科目 | 配点 | 時間 | 回答数 | |
---|---|---|---|---|
1次試験 | 基礎能力試験 | 2/7 | 2時間20分 | 40問 |
専門試験(多肢選択式) | 3/7 | 2時間20分 | 40問 | |
専門試験(記述式) | 2/7 | 2時間 | 2題 | |
2次試験 | 人物試験 | ― | ― | ― |
1次試験は基礎能力試験と専門試験(多肢選択式)を合わせて合格者が決定されます。
専門試験(記述式)はふくまれないことに注意が必要です。
2次試験に配点はなく、合否の判定だけおこなわれます。
最終合格者は1次試験と2次試験をすべて総合して決定されます。
それでは、試験種目の内容を1つずつ確認していきましょう。
基礎能力試験
労働基準監督官の基礎能力試験は、よく「教養試験」とよばれるものと同じです。
A,B区分の問題は共通で、40問が出題されます。
各科目ごとの出題数は、
(平成29年度試験)
分野 | 科目 | 出題数 |
---|---|---|
一般知能 | 現代文 | 6 |
英文 | 5 | |
判断推理 | 8 | |
数的推理 | 5 | |
資料解釈 | 3 | |
一般知識 | 時事 | 3 |
法律 | 1 | |
政治 | 1 | |
経済 | 1 | |
物理 | 1 | |
化学 | 1 | |
地学 | 1 | |
日本史 | 1 | |
世界史 | 1 | |
地理 | 1 | |
思想 | 1 | |
合計 | 40 |
法律や物理などの一般知識分野にくらべて、現代文や判断推理といった一般知能分野のほうがはるかに出題数が多くなっています。
国家総合職とくらべると、現代文が2問多くて英文が2問少ない、資料解釈が1問多いなど特徴があります。
専門試験(多肢選択式)
労働基準監督官の専門試験の多肢選択式はマークシート方式です。
問題の難易度は国家総合職よりやさしく、国家一般職と同じくらい。
回答が必須の問題と、任意で選択できる問題に分かれています。
全体の回答数は40問です。
AとB区分で出題科目や出題数がちがいます。
労働基準監督官Aの出題数の内訳は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
労働法 | 7 | 2科目12問 必須回答 |
労働事情 | 5 | |
憲法 | 4 | 7科目36問から 28問を選択回答 |
行政法 | 4 | |
民法 | 5 | |
刑法 | 3 | |
経済学 | 13 | |
労働経済/社会保障 | 5 | |
社会学 | 2 | |
合計 | 76 | 40 |
労働基準監督官Bの出題数の内訳は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
労働事情 | 8 | 必須回答 |
数学 | 9 | 3科目38問から 32問を選択回答 |
物理 | 21 | |
化学 | 8 | |
合計 | 76 | 40 |
専門試験(記述式)
労働基準監督官の専門試験の記述式は、マークシート方式の多肢選択式とちがって、設問に対して1,000文字ていどで論述回答する試験です。
たとえば労働事情の出題例は、
- 労働経済に関する次の用語について、それぞれ100字程度で説明せよ。
「労働分配率」「構造的失業」「春闘」 - 我が国の労働市場が、経済のグローバル化や産業構造の変化、就業形態の多様化などの構造変化に直面する中で、日本経済が持続的に成長し、雇用と所得の拡大を実現していくためには、今後どのような労働市場政策が必要とされるかについて論ぜよ。
AとB区分で出題科目や出題数がちがいます。
労働基準監督官Aの出題数は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
労働法 | 1 | 2科目2題 必須回答 |
労働事情 | 1 |
労働基準監督官Bの出題数は、
科目 | 出題数 | 回答数 |
---|---|---|
工業事情 | 1 | 必須回答 |
工学に関する専門知識 | 3~5 | 1題選択回答 |
人物試験
労働基準監督官の人物試験とは面接のことです。
集団ではなく個別に面接がおこなわれます。
「コンピテンシー」とよばれる、成果に結びつく行動や能力をつかった面接方法を採用しています。
質問の中心は「そのときどう行動しましたか?」と、受験生の過去のエピソードから行動や結果を掘りさげるものです。
労働基準監督官の「試験日程」
労働基準監督官の試験日程と採用までのながれはこちら。
(平成29年度実施試験の日程)
- 【受験案内】:2月1日~(ホームページに掲載)
- 【受験申込み】:3月31日~4月12日(インターネットから行う)
- 【第1次試験】:6月11日
- 【合格発表】:7月4日
- 【第2次試験】:7月12,13日
- 【最終合格発表】:8月23日
- 【内定】:10月1日~
ほかにも労働局で「業務説明会」や「職場訪問」が開催されることがあります。
労働基準監督官の「勉強スケジュール」
労働基準監督官の対策期間がだいたい1年間あるばあいのスケジュール例はこちら。
試験種目 | 月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
9~12 | 1~3 | 4~6 | 7 | 8 | ||
基礎能力試験 | 一般知能 | ★ | ☆ | ☆ | ||
一般知識 | ☆ | ☆ | ||||
専門試験(多肢選択式) | ★ | ★ | ★ | |||
専門試験(記述式) | ★ | ★ | ||||
人物試験 | ☆ | ★ | ||||
採用試験 | ★ |
- 【★】:注力して取りくむ試験種目
- 【☆】:取りくむ試験種目
9~12月
試験勉強はまず基礎能力試験の「一般知能」と「専門試験の多肢選択式」からはじまります。
一般知能の科目は出題数がとても多く、毎日コツコツと問題を解きつづけることで得点力がみにつきます。
専門試験の択一式は記述式対策の土台になるので、早くから学習しておきましょう。
1~3月
年明けあたりからは「一般知識」と「専門試験の記述式」の対策もスタートです。
一般知識は出題数が少なく、範囲がとても広い科目ばかり。
専門試験の記述式と、3問が出題される一般知識の時事問題の学習に注力します。
4~6月
「人物試験」の対策は後回しになりがち。
人物試験は少し対策をすれば評価がぐっと高まる、コストパフォーマンスのよい試験です。
専門試験の記述式対策に追い込みをかけながらも、公務員予備校の面接指導の予約が空いているうちに、人物試験対策を少しずつすすめておきましょう。
7~8月
1次試験が終われば2次試験(人物試験)対策に集中できます。
1次試験が終わる前でも、労働局の「業務説明会」や「職場訪問」があるときは参加することを忘れずに。
労働基準監督官の「基礎能力試験科目の学習法」
労働基準監督官の基礎能力試験の配点は2/7です。
A,B区分で共通の問題が40問出題されます。
基礎能力試験は一般知能と一般知識にわかれます。
- 【一般知能】:現代文/英文、判断推理/数的推理/資料解釈
- 【一般知識】:時事、法律/政治/経済、物理/化学/生物/地学、日本史/世界史/地理/思想
出題数は一般知能のほうが圧倒的に多くなっています。
現代文/英文、判断推理/数的推理/資料解釈の学習を優先しましょう。
現代文/英文
「現代文」と「英文」の出題数を合わせると11問。
コツコツと学習をつみ重ねれば満点もねらえる科目なので、早いうちからしっかり取りくみましょう。
現代文は標準的な難易度の問題が多く出題されます。
時間をはかりながら過去問演習をくり返せば、対策は十分です。
英文は難易度が高い問題も登場します。
出題テーマがはば広く、なじみのない問題にそうぐうすることも。
労働基準監督官だけでなく国家総合職や国家一般職の過去問にも取りくんで、得点力を高めるのがおすすめです。
判断推理/数的推理/資料解釈
「判断推理」「数的推理」「資料解釈」の3科目で16問の出題数です。
基礎能力試験のなかでもっとも重要な科目なので、苦手にせず勉強する必要があります。
判断推理と数的推理の問題は、長文で内容も複雑化する傾向にあります。
図表をいくつか使わないと解けない問題がみられることも特徴です。
とつぜん力がつく科目ではないので、少しずつでも毎日継続して学習することが大切。
資料解釈は時間さえあれば正解できる科目です。
過去問演習をとおして、すばやく確実に解く練習をしておきましょう。
時事
過去2年くらいの出来事から出題されます。
頻出テーマは「財政」「社会保障」「環境」「エネルギー」「防災」。
細かなデータをすべて覚えるのは大変なので、数値が上がったか下がったかなど大まかな方向性をおさえるのが効率的です。
法律/政治/経済(社会科学)
法律はおもに憲法の人権や統治から出題されます。
まれに「国際法」「行政法」「労働法」などが問われることもあり、完ぺきな対策は難しいです。
専門試験の憲法の学習をすすめていきましょう。
政治の頻出テーマは「日本の選挙制度」「各国の政治制度」「国際機関」「中東戦争」など。
専門試験の政治学や国際関係の勉強でカバーできます。
経済は法律や政治とちがって、専門試験の経済学と内容がことなる問題が出題されます。
「日本や世界の経済事情」「財政や金融」「経済指標」「経済史」など出題分野は広め。
基礎能力試験の経済の過去問演習にしっかり取りくむ必要があります。
物理/化学/生物/地学(自然科学)
「物理」「化学」「生物」「地学」など自然科学から合計で3問が出題されます。
高校教科書の練習問題レベルなので、浅く広く学習するのがおすすめ。
物理は「力のつり合い」「物体の運動」「エネルギーと運動量」「電気回路」「電流と磁場」が頻出です。
原子の構造やエネルギーが出題される可能性もがるので、基本原理を理解しておきましょう。
化学と生物はテーマを横断した総合問題がよく登場します。
化学は「高分子化合物」「食品添加物」、生物は「生態系」「生物の多様性」などマイナーな分野の出題にも注意して、はば広い対策が必要です。
地学はわりと細かな知識が問われます。
中学理科の「大地の変化」というテーマから基礎をかためましょう。
日本史/世界史/地理/思想
日本史は通史やテーマ史からの出題がほとんど。
「文化」「対外交渉」「教育」「戦乱」「貿易」「通貨」などのテーマを確認しましょう。
世界史は出題範囲がとても広いです。
あまり時間はかけず、よゆうがあれば「絶対王政以降の西洋史」にしぼって対策するのがおすすめ。
難易度はあまり高くなく、明らかに誤りの選択肢が多いので基礎を知っていれば正解できます。
地理は高い難易度ではないですが、広い学習が必要になります。
さっと取りくむなら「地形」「気候」を選ぶのがおすすめ。
思想の出題内容はワンパターン。
「西洋近現代」「日本の近代思想」「諸子百家」「江戸時代の思想」について、有名思想家の主著やキーワードを整理しておけば正解できます。
労働基準監督官Aの「専門試験科目(多肢選択式)の学習法」
労働基準監督官Aの専門試験(多肢選択式)の配点は3/7、回答数は40問です。
労働法と労働事情あわせて12問は必須回答。
ほかに7科目36問のなかから、28問を選択して回答します。
労働法
労働法は7問の出題。
「労働基準法」から5,6問が出題されるのにたいして、「労働組合法」からは1,2問の出題なのでかたよりがあります。
過去問の基礎知識でとける標準的な難易度です。
労働基準法の分野を中心に、条文と判例の基礎知識をかためましょう。
以前は選択肢の前半と後半で別の論点が登場する、ほかの公務員試験ではみられない出題形式でした。
これは選択肢が2倍に増えることに近いです。
ですが最近はふつうの出題形式に変化しているので、さらに得点しやすくなっています。
ほかの公務員試験ではマイナーな「安全衛生」「労働災害」の学習も忘れずに。
労働事情
労働事情からは5問が出題されます。
頻出分野は、
- 【就業構造】:労働力人口、労働力率、就業者数、非正規雇用
- 【労働需給】:完全失業者数、有効求人倍率、若年者雇用、障害者雇用、外国人雇用
- 【労働時間】:実労働時間、所定外労働時間、年間休日数、年次有給休暇、定年制度
- 【労働賃金】:給与、産業別賃金、雇用別賃金
- 【労使関係】:労働組合組織率、一時金妥結状況、団体交渉、労使紛争
上の分野について、最新版の白書をつかってデータをチェックしておきましょう。
- 労働経済白書
- 厚生労働白書
- 労働力調査
憲法
憲法は出題数が4問と少なめです。
浅く広く、基礎的な知識を問う問題が出題されます。
人権からは「人権一般」「個別の人権」、統治機構からは「国会」「内閣」全体がまんべんなく登場。
過去問演習をとおして憲法の条文や判例など、基礎をあたまにいれておきましょう。
行政法
行政法は4問の出題です。
「行政作用法」と「行政救済法」の2大テーマからほとんど出題されます。
基本的な知識を問う問題が多く、必要な知識はすべて過去問の範囲におさまっています。
行政作用法は主要な制度について、行政救済法はおもな判例について過去問演習をくり返しましょう。
民法
民法からは5問が出題されます。
総則1問、物権1,2問、債権1,2問、家族法1問ていどの内訳です。
頻出分野は総則が「意思表示」「制限行為能力者」「代理」「時効」、物権が「不動産物権変動」「抵当権」「占有権」「留置権」、債権が「債権者代位権」「相殺」「賃貸借」、家族法が「婚姻」「親族」「相続」など。
深く細かい知識は問われません。
頻出分野を中心に過去問題集の基本問題から知識をかためるのがおすすめです。
刑法
刑法は3問の出題。
難易度は高めです。
個別の論点ではなく「違法性一般」や「国家法益全般」など、いろいろな論点をふくむ出題形式が主流です。
問題は長文で、わりと細かな内容まで問われるばあいがあるので注意しましょう。
過去問演習をくり返すという学習方法は変わりません。
経済学
経済学は「ミクロ経済学」「マクロ経済学」「経済事情」あわせて13問が出題されます。
ミクロ経済学は「余剰分析」「ゲームの理論」が頻出、マクロ経済学は「IS-LM分析」「AD-AS分析」「経済成長理論」が頻出です。
範囲は広いですが、典型的な問題が多く出題されます。
導入テキストと過去問題集をつかって、標準問題はかくじつに得点できるように学習しましょう。
経済事情の頻出テーマは「経済成長率」「消費」「投資」「物価」「アメリカ」「EU諸国」「東南アジア」「RRICs」など。
広い分野の細かなデータを覚えるのは効率がよくありません。
最新版の時事参考書が発売してから、本の内容にしぼってあたまに入れておきましょう。
労働経済/社会保障
労働経済と社会保障あわせて5問の出題です。
労働経済は「ジョブサーチ理論」「人的投資理論」「労働需要と供給の理論」がよく登場します。
労働経済学の導入テキストから主要な理論をはあくしていきましょう。
「労働事情」の科目とおなじ内容からの出題もあるので、労働事情で紹介した白書は要チェックです。
社会保障は「人口動態」「社会保障の動向」がデータで問われるので、厚生労働白書を確認しておきましょう。
社会学
社会学は学説問題が多く出題されます。
学者名とキーワードを結びつけておぼえるだけで解ける問題がほとんどです。
頻出分野の「社会学理論」「社会集団」「社会心理」から過去問演習をおこないましょう。
労働基準監督官Bの「専門試験科目(多肢選択式)の学習法」
労働基準監督官Bの専門試験(多肢選択式)の配点は3/7、回答数は40問です。
労働事情は全8問が必須回答。
ほかに3科目38問のなかから、32問を選択して回答します。
労働事情
労働事情は労働基準監督官Aとの「共通問題」が3問、「労働安全衛生」にかんする問題が5問出題されます。
共通問題については労働基準監督官Aの記述を参考にしてください。
労働安全衛生は「労働安全衛生法等の規定」「労働災害」「健康被害」が頻出です。
過去問演習でポイントをつかんでおきましょう。
数学
数学は9問の出題です。
毎年出題される分野は「行列」「微分」「積分」「確立」「統計」の5つ。
問題文は短く、公式を知っていて計算できれば得点できるものばかりです。
くり返し計算練習をして計算力を高めましょう。
物理
物理は「力学」10問、「原子物理」1問、「波」2問、「熱力学」2問、「電磁気学」4問、「情報工学」2問ていどの合わせて21問が出題されます。
難易度が問題ごとにちがうのが特徴です。
出題数が多い力学からは「力やモーメントのつり合い」「単振動」「水の力学」は毎年のように出題され、難易度は低め。
いっぽう情報工学は内容が定まらず、学習が難しい分野です。
物理は出題数がとても多いので、苦手でもすべて捨てることはできません。
力学の基本問題はかくじつに得点できるよう、高校のテキストや過去問題集に取りくみましょう。
化学
化学は「理論化学」「無機化学」それぞれ2問ていど、「有機化学」4問ていどの出題です。
計算問題よりも知識問題のほうが多く登場します。
有機化学の出題数が多いので、化学専門ではないひとは得点しにくい科目。
あまり深入りせず、高校テキストの基礎事項を確認してから過去問の基本問題をおさえましょう。
労働基準監督官の「専門試験(記述式)の学習法」
労働基準監督官の専門試験(記述式)の配点は2/7。
基礎能力試験の配点と同じです。
2時間の試験時間で2題の答案を作成します。
難易度はとても高めです。
問題文の内容を正しく理解し、必要な論点を適切な順番で構成し、制限時間内に論述しなければいけません。
難易度の高さや対策のしづらさから、受験生によって大きな差がつきやすい試験です。
対策のステップ
- 多肢選択式の学習をすすめる
- 主要分野ごとに論点、制度、条文などを整理する
- 主要テーマの答案をつくる
記述式の練習をする前に、まずは多肢選択式の導入テキストと過去問演習に取りくみ、基礎事項を理解して論述の土台をつくることが効果的です。
1つの分野がおわるたびに、論点や重要事項をノートにまとめておきます。
多肢選択式の学習があるていど身についたら、記述式の頻出テーマについて答案をつくってみましょう。
大変ですが、できるだけたくさんの答案を書きあげれば得点力はあがりますし、試験で同じようなテーマが出題される可能性がとても高くなります。
記述式の対策をすると理解がより深まるので、多肢選択式の学習にも効果がありますよ。
答案作成のながれ
- 問題文をよく読む
- 答案の構成をつくる
- 答案を書く
いきなり答案を書きだすのはよくありません。
問題文をよく読んで、なにが問われているのかじっくり把握します。
次に答案の構成を考えましょう。
答案は全体の論理が一貫していなければならないため、はじめに設計図をつくっておく必要があるからです。
それから誤字脱字や文章のつながりに気をつけて答案を書きます。
最後の見直しを忘れずに。
労働基準監督官の「人物試験の対策法」
労働基準監督官の人物試験は面接のことです。
1次試験が終わってから1か月くらい後におこなわれます。
労働基準監督官の面接試験を突破するために必要なポイントは、次の4つです。
POINT.1 回答の構成を理解する
面接で質問されると「どんな話をしよう?」「どういう構成で伝えたらいいだろう」と、焦ってしまいますよね。
面接独特の空気のなかで、質問にすばやく的確に答えるのは難しいものです。
でも、評価の高い面接の回答の構成には決まりがあります。
この決まりを理解しておけば、本番でどう話したらいいか迷うことはありません。
落ち着いて自分をアピールすることができます。
面接官から高評価をもらう回答の構成を理解しましょう。
POINT.2 定番質問の回答をつくり、解答例と比べる
面接試験でよく問われる質問は決まっています。
下の記事で紹介している定番質問に対する回答を、あらかじめ考えておくのがおすすめ。
用意した回答は、公務員予備校の講師などプロに添削してもらうのが一番です。
よいところ、わるいところを客観的にアドバイスしてくれて、だいたいの点数も分かりますからね。
添削をお願いできるひとがいない場合は、この記事の解答例をよく読んでみましょう。
解答例は平均的な回答として書いています。
自分の回答と比べると、改善するポイントが見えてくるはずですよ。
POINT.3 面接カードをていねいに作る
筆記試験を突破すると、面接カードとよばれる質問項目がならんだ用紙が配られます。
それに回答を書いて、面接時に持参するのが一般的です。
面接直前の控室で配られ、その場で記入するばあいもあります。
民間企業でいうエントリーシートのようなものです。
面接官は事前に面接カードを読み、面接の評価に加味をします。
じっさいの面接も提出されたカードにそって進行することが多いので、面接カードにどんな内容を書いておくかは、とても重要だと分かりますよね。
面接官から高評価をもらう面接カードの書き方を理解しましょう。
POINT.4 落ちる人の特徴を知る
せっかくがんばって筆記試験を突破したら、「面接はぜったい落ちたくない」と思いますよね。
面接に「受かりやすいひと」もいれば、ざんねんながら「落ちやすいひと」もいるんです。
落ちやすいひとには共通点があります。
こちらの記事をよく読んで、面接でこうなってしまわないよう注意しましょう。
あわせて対策法も解説するので、自覚があるひともきっと改善できますよ。
労働基準監督官の「独学/予備校」
労働基準監督官を受験するひとの半分くらいは独学、のこりは公務員予備校にかよっています。
公務員予備校はお金がかかるので、どうしようか迷いますよね。
独学でも対策可能な試験種目
- 基礎能力試験
- 専門試験(多肢選択式)
労働基準監督官の基礎能力試験と専門試験(多肢選択式)は、独学でも合格レベルまで得点力を高めることができます。
どちらの試験の科目も、質の高い導入テキストや過去問題集がそろっているからです。
難関大学合格者や勉強に自信があるひとなら、市販の参考書をつかってひたすら問題演習に取りくめば合格点をこえることは難しくありません。
予備校で対策したほうがいい試験種目
- 専門試験(記述式)
- 人物試験
労働基準監督官の専門試験(記述式)の難易度の高さはピカイチです。
多肢選択式の学習だけでは歯が立ちません。
人物試験(面接)は、本番の形式で模擬面接をなんどもくり返すことが合格への王道です。
面接カードも回答を作成し、専門的なスキルがあるひとに添削してもらう必要があります。
どれも独学で対策するのは厳しい試験種目です。
公務員予備校では、専門試験(記述式)について頻出テーマ分析や、答案作成、添削指導など万全の対策ができます。
面接練習のサポート体制や、先輩合格者の体験記などノウハウの蓄積も十分です。
労働基準監督官は難関の公務員試験。
よほど筆記試験に自信があったり、面接対策の環境を自前で用意できるひと以外は、公務員予備校をつかう方法がおすすめです。

これで「労働基準監督官」の解説はおしまいです。
おつかれ様でした。
労働基準監督官って、国税専門官や財務専門館と試験が似ている印象です。
どんな試験内容なのか気になります。