

労働法は民法などほかの法律科目にくらべて、マイナーなイメージがありますし、あまり出題数も多くありませんよね。
だから試験勉強の時間が足りず、労働法をすててしまう受験生がいます。
でも、労働法は公務員試験の科目でもっともコストパフォーマンスのいい科目のひとつなんです。
この記事では、
- 労働法の出題分野と形式
- 労働法の頻出分野と難易度
- 労働法の効果的な勉強方法
- 労働法のおすすめ参考書
- 労働法の試験種類ごとの勉強ポイント
をすべて解説します。
労働法を得意科目にして、本番で高得点をめざしましょう!
公務員試験「労働法」を知ろう!
まずは、労働法がどんな科目なのか見てみましょう。
それから難易度や頻出分野を確認し、大まかな勉強の方針を立てます。
どんな科目なの?
労働法のおもな分野、出題数、出題形式は次のとおりです。
「ふ~ん。そうなんだ」くらいに読み流して大丈夫ですよ。
分野は2つ
労働法は次の2つの分野に分かれています。
- 【個別的労働関係法】:労働契約、解雇、賃金、労働時間、休日/休憩、年次有給休暇、女性、年少者、就業規則、懲戒
- 【集団的労使関係法】:労働組合、団体交渉、争議行為、組合活動、労働協約、不当労働行為、労働紛争の処理
出題数は少なめ
専門試験で労働法はどれくらい出題されるのかというと、
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
労働法の出題数 | 3 | ― | 7 | ― | 2 | 2 |
全体の回答数 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 |
全体の出題数 | 49 | 80 | 48 | 55 | 40 | 40 |
回答必須/選択 | 選択 | ― | 必須 | ― | 必須 | 必須 |
受験案内 | 国総合 | 国一般 | 労基官 国税官 財務官 |
特別区 | ― | ― |
- 【国総合】:国家総合職(法律区分)
- 【国一般】:国家一般職
- 【国専門】:国家専門職(労働基準監督官、国税専門官、財務専門官)※国税専門官、財務専門官は出題なし
- 【特別区】:東京都特別区(東京都23区)※出題なし
- 【地上級】:地方上級(道府県庁、政令指定都市)
- 【市役所】:市役所上/中級(政令指定都市をのぞく市役所)
労働基準監督官では、もちろん出題数は7問と多いです。
国家総合職で労働法は選択科目。3問が出題されます。
地方上級や市役所上/中級は、2問の出題ですが必須回答。
民法や経済学にくらべれば出題数は少なめですね。
出題形式は2つ
問題の出題形式は大きく2通りです。
- 【五肢択一】:「次の記述のうち、妥当なのはどれか?」
- 【妥当な組み合わせ】:「次の記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか?」
ほとんどの問題は【五肢択一】形式で出題されます。
【妥当な組み合わせ】のほうが正確な知識が必要ですから、1つの正解を選ぶ五肢択一が多い労働法の問題は答えやすいといえます。
それでは次に、労働法の頻出分野と難易度を確認してみます。
頻出分野と難易度をチェック
公務員試験の試験種別に、労働法の頻出分野と難易度を表にまとめました!
国総合 | 国一般 | 国専門 | 特別区 | 地上級 | 市役所 | |
---|---|---|---|---|---|---|
個別的労働関係法 | 〇 | ― | ◎ | ― | 〇 | 〇 |
集団的労使関係法 | 〇 | ― | △ | ― | 〇 | 〇 |
難易度 | ★★★★☆ | ― | ★★★★☆ | ― | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ |
- 【頻出分野】は「◎:とてもよく出る」「〇:よく出る」「△:出る」の3つに分類しています。
- 【難易度】は「★:とても易しい」「★★:やや易しい」「★★★:標準」「★★★★:やや難しい」「★★★★★:とても難しい」の5段階で表示しています。
- 個人の所感により作成したものです。
頻出分野は?
国家専門職、つまり労働基準監督官は労働基準をあつかう仕事のため、【個別的労働関係法】から多くが出題されています。
ですが、近年は集団的労使関係法分野の出題が増加傾向にあるので注意が必要です。
そのほかの試験種は2,3問なので、両方の分野から出題されることがほとんど。
難易度は?
国家総合職や国家専門職の難易度はやや高め。
ですが、基礎的な知識があれば答えられる問題も出題されるため、民法などに比べれば難易度は高くありません。
地方上級や市役所上/中級は難易度の易しい問題がほとんどです。
過去問題集に収録されている基本的な知識が、くり返し出題されています。
頻出分野と難易度の話をまとめると、
- 国家専門職をのぞけば、すべての分野からバランスよく出題される!
- 難易度はあまり高くない!
勉強の方針
ここまでをふまえて、労働法の大まかな勉強方針を次のように決めましょう。
- 基礎知識の習得で十分!
- 行政学や政治学の次に対策する!
基礎知識の習得で十分
「労働法は出題数が少なく、難易度は高くない」とお伝えしましたね。
地方上級や市役所上/中級のばあいは、2問の出題で、問題は基礎がわかれば解けるものばかりです。
国家総合職は科目選択ではなく、問題選択の試験です。
労働法の問題は細かな知識を問う難易度の高い問題もありますが、地方公務員試験と同じくかんたんな問題も出題されます。
難問をすて、やさしい問題だけひろって回答することができるわけです。
地方公務員試験や国家総合職を受験するばあいは、労働法は基礎知識を習得すれば十分なんです。
国家専門職は出題数が多くて難易度も高いため、発展的な知識まで勉強する必要があります。
行政学や政治学の次に対策する
地方上級や市役所上/中級を受験するときの、おすすめ勉強順番はこちらです。
主要法律系科目や主要経済系科目、行政学などの対策が終われば、のこりは労働法/刑法/国際関係ですね。
刑法や国際関係は出題数が少ないわりに、勉強に時間がかかる科目です。
まずは労働法を終わらせてしまいましょう。
- 憲法
- 民法 or 行政法
- ミクロ経済学
- マクロ経済学
- 財政学
- 行政学 or 政治学

労働法の特徴がよくわかりましたね。
それではいよいよ、公務員試験の労働法で高得点をとる勉強法を解説していきますよ。
公務員試験「労働法」が得点できる勉強法!
労働法を勉強するとき、本番直前まで心にとどめてほしいことがあります。
それをつねに意識しながら、導入テキストと過去問題集の使い方をマスターして学習していきましょう。
大切な3つのポイント
- レジュメ→問題→解説の流れを意識する!
- 労働条件決定のプロセスを理解する!
- 集団的労働条件決定のプロセスを理解する!
POINT.1 レジュメ→問題→解説の流れを意識する
過去問題集のレジュメを読んでから、問題にとりくみ、解説を読みこんで知識を定着させる流れを意識して勉強しましょう。
レジュメを読んでも「どこを覚えたらいいんだろう」ととまどい、問題を解いても正解がわからず不安になるかもしれません。
ですが、解説を読むステップまですすめば、覚える知識がクリアになってきます。
問題を解くことだけがんばらず、レジュメから問題そして解説というステップをとおして理解する意識が大切です。
POINT.2 労働条件決定のプロセスを理解する
労働法の理論的な基本構造はとてもシンプルです。
いきなり過去問演習にはいる前に、構造を知っておくと理解が早まるのでおすすめ。
とくに労働条件決定のプロセスを知っておくと役立ちます。
- 【労働契約】:労働条件は使用者と労働者の合意によって労働契約として決定される
- しかし、使用者と労働者には力関係の差がある。そこで以下の方法がとられる
- 【労働協約】:労働組合が結成されている場合、組合が労働条件を交渉する
【労働基準法】:労働組合が結成されていない場合、労働基準法最低基準を強行的に規律する - また、労働契約は細部まで具体的に決められていない場合が多い。そこで一般的に以下の方法をとることができる
- 【労働協約】:労働組合が結成されている場合、組合が労働条件を具体的に交渉することができる
【就業規則】:使用者が定めることができる
労働法の分野は2つに分かれていましたね。
個別的労働関係法の分野では、おもに【労働基準法】が労働条件つまり賃金や休日をどう定めているのか、1つずつ学ぶわけです。
また【労働契約】や【就業規則】もふくまれます。
問題を解く前にこれを知っていると理解がスムーズですよ。
【労働協約】はもう片方の分野であつかいますので、次に説明しますね。
POINT.3 集団的労働条件決定のプロセスを理解する
労働法のもう片方の分野は、集団的労使関係法です。
集団的労使関係法の分野を勉強する前には、集団的労働条件がどのように決定されるのか、あらかじめ知ってきましょう。
- 【組合結成】:労働組合の用件を満たす必要があり、認められればその活動に法的な保護があたえられる
- 【団体交渉】:組合は、組合員の労働条件について使用者と交渉することができる
- 【争議行為】:使用者の譲歩を引き出すために、労働者は争議行為(ストなど)が保障されている
- 【労働協約】:団体交渉または争議行為をへて、使用者と労働者が合意にいたれば労働協約が定められる
- 【不当労働行為】:1~4までのプロセスが有効にはたらくため、使用者の不当な干渉を排除する制度が設けられている
集団的労使関係法の分野では、上の内容を順番に勉強するわけです。
この流れを知っておきましょう。
おすすめ参考書と使いかた
参考書選びはとても重要。
数ある参考書のなかで、おすすめはこちらです。
- 【公務員試験 新スーパー過去問ゼミ 労働法】:過去問題集
- 【公務員試験 合格の500】:総仕上げ
参考書の特徴やおすすめする理由をくわしく知りたいときは、この記事を読んでくださいね。
よい参考書をえらんだら、参考書を正しく使って勉強することが大切。
大まかな流れは次のとおりです。
- スー過去をくり返し解く!
- 合格の500を解く!
勉強の効果をもっとも高める参考書の使い方を、くわしく知りたいときはこの記事を読んでくださいね。
試験種類ごとの学習ポイント
公務員試験には国家総合職や国税専門官、地方上級などたくさんの種類があります。
試験の種類ごとに、労働法の効果的な学習方法はちがうんです。
自分が志望するところの学習ポイントをおさえましょう。
国家公務員や裁判所職員、東京都庁職員、国立大学法人等職員はとくに難関の公務員試験です。
「労働法の独学はちょっと自信がない…」というひとは、公務員試験予備校の活用をかんがえてみましょう。
公務員試験予備校は、質の高い講師やテキストがそろっているのでおすすめです。

これで労働法の勉強法の解説は終わりです。おつかれ様でした。
労働法はマイナーなイメージがあって出題数も多くありませんが、内容はとてもかんたんで勉強しやすく、満点をねらえるお得な科目です。
すてずに勉強すれば、ほかの受験生に差をつけることができますよ。
ほかの科目の勉強で手がいっぱいで、じつは労働法には手がまわりませんでした。